「ここで高橋宏か!」と驚いたファンも少なくなかっただろう。しかし栗山英樹監督は迷わず、予定どおりに高橋宏を登板させた。世界一をかけたアメリカとの決勝戦、5回表に三番手として登場。メジャーの強打者たちを相手に真っ向勝負を挑み、その期待に応えた。決勝のマウンドでの心境、またプロ3年目となる今季の抱負を聞いた。 取材・構成=牧野正 写真=松村真行、BBM、Getty Images ※年齢は2023年の満年齢 
決勝のマウンドは「うれしいというより緊張しかなかった」。3年後のWBCでは先発としてまっさらなマウンドに立つことが目標だ
決死のマウンド
世界一まで、あと1勝。最後の相手となったアメリカに対し、日本は3対1とリードして5回表を迎える。先発の今永昇太(DeNA)、戸郷翔征(巨人)のあとを受け、三番手としてマウンドに上がったのは侍ジャパン最年少の20歳、高橋宏斗(中日)だった。これまでに味わったことのない緊張感。足の震えはあったが、世界中が注目しているこの大舞台で投げられる喜びも感じていた。 ──4回裏が終了し、いざ登板となったときの気持ちを教えてください。
高橋 ものすごい緊張感、今までの人生の中で一番緊張しました。
──決勝の登板はいつ言われましたか。
高橋 決勝当日のお昼ごろです。順調に行けば、戸郷さんのあとの三番手で行くからと。だから行く準備はできていました。言われてから、ずっと緊張していましたけど(笑)。
──どうやって落ち着こうと?
高橋 いや、もう落ち着こうなんて思わなかったです。それはもう僕だけでなく、全員が同じ気持ちだったと思うので、とにかく自分のパフォーマンスをしっかり出そう、出し切ろうと、緊張しながら考えていました。
──韓国戦、オーストラリア戦に続いて3試合目の登板でしたが、決勝のマウンドはやはり違いましたか。
高橋 全然違いました。韓国、オーストラリアの試合は東京でしたし、球場全体が味方で大声援の中で本当に投げやすかったですけど、決勝は真逆。完全アウェーの状態で、球場の雰囲気もまるで違いました。しかも決勝でしたから。
──5回表のアメリカは一番ベッツからの好打順でした。いきなり三塁への内野安打、しかも一度はアウトの判定がリクエストで覆ってセーフになりましたが、動揺はなかったですか。
高橋 自分でもタイミング的にはセーフかなと思っていたので(笑)。だからリクエストで待機中、投球練習はクイックで投げていました。すぐに次に気持ちを切り替えていました。
──続くトラウトには2球続けてボールとなり、3球目で
中村悠平捕手(
ヤクルト)のサインに首を振ってスプリットを投げました。
高橋 絶対に真っすぐを待っていると思っていましたから、そこは僕が感じ取って首を振らせてもらいました。あそこで真っすぐを投げていたら本塁打を打たれていたような気がします。緊張はしていましたが、そこは自信を持ってマウンドに上がれていたように思います。
──トラウトをフルカウントから三振に仕留め、少し落ち着きましたか。
高橋 変わらなかったです。一発同点の場面は続くので、まったく気を抜けなかったです。それに・・・
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