野球界で当たり前のように使われている言葉やプレー。「結局、それってどういうこと?」と聞かれると、意外にうまく説明できない事象を、データや数字を使って解析していく。第20回のテーマは「オリックス・ディクソンのナックルカーブ」だ。 
“高速”ナックルカーブを軸に投球を組み立てている。ディクソンの“高速”のナックルカーブはやはり大きな武器だ
フォーシームに対して約92%の速度を誇るカーブ
前回は球界屈指のゴロピッチャーである
阪神・
小野泰己投手を分析しましたが、今回も同じく球界でもトップクラスのゴロ率を誇るゴロピッチャーである、オリックス・ディクソン投手の投球データをひも解いていきましょう。
図1 ディクソンの球種割合(2018年) 
データ提供●(株)共同通信デジタル ※記録はすべて8月27日現在
ディクソン投手と言えばナックルカーブが代名詞です。その球種割合は今季1000球以上投げている投手(つまり主に先発投手)の中でトップの33%を占めています(図1)。もっとも特徴的なのがフォーシームの平均球速146.7キロに対して約92%の134.5キロと高速であること(表1)。時に140キロを超え、いわゆるハードカーブ、パワーカーブと呼ばれる高速カーブです。
表1 ディクソンの球種データ(2018年) ディクソン投手のナックルカーブは、カーブとしてはトップの奪空振り率18.4%を誇り、またゴロ率も63%と高い数字を記録しています(表1)。これまで何度かお伝えしてきましたが、打者は横方向の変化より縦方向の変化への対応のほうが難しくなります。一般的なピッチャーであればスライダー並みの球速でドロップ方向に変化するナックルカーブを低めに集めることで、ボールゾーンに落ちれば空振りを奪い、低めのストライクゾーンではゴロを量産しているのです。
実際、ディクソン選手は全82奪三振のうち43個をナックルカーブで奪っています。また被打率を見ると、ナックルカーブ全体では.195ですが、ストライクゾーンを9分割したときの低めのコースでは.174、ストライクゾーンより低めのボールゾーンでは.043という驚異的な数字になっています。ストライク率が57.3%と高くないのは低めに集めているためでしょう。
この高速のナックルカーブを軸としながら、フォーシームと球速差の少ないツーシームや、やはり球速差の少ないチェンジアップとスライダーでピッチ
トンネルを構成する、つまり途中まで同じ軌道で投げることで打者には同じボールに見え、手元で変化する「動くボール」にすることで、ピッチングを組み立て、ゴロの山を築いているのです。
解説者 PROFILE 神事努/じんじ・つとむ●国学院大学人間開発学部健康体育学科准教授。1979年生まれ。バイオメカニクスを専攻し、中京大学大学院で博士号を取得。2007年から国立スポーツ科学センター(JISS)のスポーツ科学研究部研究員。国際武道大学体育学部を経て、2015年4月から現職。株式会社ネクストベース エグゼクティブフェロー。