シーズンも後半戦に入り、セ・リーグは巨人が独走している。マジックの話題も出たほどだ。
私に言わせれば、いまの球界にとってマジックなど何の意味もない。リーグ戦で3位まで入れば日本シリーズ進出の可能性が生じるからだ。
優勝などしなくてもクライマックスシリーズ(CS)の出場権を確保した上で、力を蓄えていたほうが利口である。いまは10ゲーム差をつけようと20ゲームだろうと日本シリーズに行ける保証がないのだ。こんな制度があっていいはずがない。
今シーズン巨人が勝ってCSで負けたら面白い。そうなったら、巨人の渡辺恒雄氏(読売新聞グループ本社代表取締役主筆)もいい加減、「この制度はおかしい」と気づくだろう。
CSのような制度を続けていたら球界はダメになる。コミッショナーはなぜオーナーに遠慮しているのか。リーグ戦優勝チームが日本シリーズ出場チームと必ずしも一致しない。真の日本一なきシーズンがある。これを100年後のプロ野球ファンにどう説明するのか。未来の球界に対する責任を真剣に考えるべきだ。
とにかく巨人が何ゲーム差をつけて1位になったところで何の値打ちもない。それを分かっていて対策を講じないのだから余計に悪い。
結局、CSは一部のオーナー主導の金もうけ、拝金主義にのっとった制度に過ぎない。要は、野球をバカにしているのだ。
小、中学生でいえば、運動会の短距離走で1位になったとしよう。その1位を尊重する心がない。1位も2、3位も同じ土俵に立てるのだから走れというのと一緒だ。そんな運動会に値打ちなどあるわけがない。そういう時代に球界がなってきた。本当に情けない。
原辰徳監督は、以前から書いているとおり、オールスターチームの監督をやっていればいい。私が不満なのは、巨人のために尽くした生え抜きの
広島・
長野久義、
西武・
内海哲也をプロテクトしなかったことだ。彼らには本来、やるべきことを提示して「できなければ喜んで引退しろ。そして若手を育ててくれ」というのが筋。巨人に尽くしてきた彼らをプロテクトから外す神経が分からない。
もう少し冷静に考えると、巨人の生え抜きで他球団の監督として一定の結果を残した人間は何人いるだろうか。私は散々いじめられ、その首謀者である
川上哲治さんより上に行きたいとの一心で、評論家時代に世界を回って懸命に野球を勉強した。その反骨心は、川上さんがいたからこそ生まれたものだ。そういう根性のある人間がいまいるだろうか。
本当は、巨人を卒業した人間が他球団の監督になって、本当の意味での巨人の誇りを証明するべきなのだ。それができていないから
工藤公康、
辻発彦といった我々の教え子が監督、コーチとなって
ソフトバンク、西武を上位に導くことになる。巨人にとっては恥ずかしいことだ。
最後に、先日行われた
ヤクルトの球団創立50周年記念試合で、私には招待状すら来なかった。OB戦の開催の是非がどうこうではなく、筋道が通っていない。チームが最下位に沈むのも当然だ。私を誰だと思っているんですか?
PROFILE 廣岡達朗/ひろおか・たつろう●1932年2月9日生まれ。広島県出身。呉三津田高、早大を経て54年に巨人入団。大型遊撃手として新人王に輝くなど活躍。66年に引退。広島、ヤクルトのコーチを経て76年シーズン途中にヤクルト監督に就任。78年、球団初のリーグ制覇、日本一に導く。82年の西武監督就任1年目から2年連続日本一。4年間で3度優勝という偉業を残し85年限りで退任。92年野球殿堂入り。