週刊ベースボールONLINE

新型コロナショックの現在地

「運命の日」は動かない!見直しを迫られるドラフト戦略 問われるスカウトの眼力と手腕

 

新型コロナウイルスの感染拡大は、国内外を問わず、野球界に深刻な影響を及ぼしている。ここでは各分野における“リアルな今”をリポートしてみたい。まずは日本プロ野球界の一大イベント、ドラフトについてだ。プロ・アマ全体で活動休止が続く中、プロのスカウトたちは窮地に陥っている。
文=岡本朋祐 写真=BBM

今秋のドラフト会議がどのような状況を経て行われるかは、現時点で誰も分からない/写真は2019年のドラフト会議


アマ公式戦延期、中止もドラフト日程は不変か


 当初、5月6日までと設定されていた緊急事態宣言は、31日にまで延長された(※その後、14日に39県は解除)。プロ野球のペナントレース開幕も、混迷を極めている。

 NPBホームページには「プロ野球行事日程」が掲載されている。昨年7月下旬、東京五輪開催のため、例年よりも約4カ月前倒しでセ・パの公式戦日程が発表された。五輪期間中に予定されていた約3週間の中断に加えて、神宮、横浜が五輪により使用できないこともあり、約1年をかけて日程を作成。円滑に運営していくための万全の準備であったが……。新型コロナウイルスの感染拡大を受けたシーズン開幕の延期により、大幅な手直しに迫られている。

 この“五輪モード”により、ドラフト会議も例年よりも2週間遅い、11月5日に設定(昨年12月9日発表)されている。アマチュア選手にとっての「運命の日」は、プロ野球の開幕延期の影響を受けない模様である。なぜならば、NPBだけの事情だけでは、片づけられない案件だからだ。ドラフト対象となる高校生(日本高等学校野球連盟)、大学生(全日本大学野球連盟)、社会人(日本野球連盟)ほかの協力を得られなければ、開催できない背景がある。

 アマチュア球界の公式戦も延期、中止が相次いでいるが、「11.5」は動かしたくないのが本音として存在する。特に高校生、大学生はドラフト指名の有無が、卒業後の進路に関わってくる問題でもあるため、一日でも早く開催してほしい意向があるのだ。先述のようにここ10数年、定着していた例年の10月下旬よりも2週間遅い。ドラフト日程の変更は考えづらい。

スカウト視察に「テレワーク」はない


 スケジュールが決まっているとはいえ、スカウト戦線は止まっている。緊急事態宣言の発令後、高校、大学、社会人とも、各チームは活動を自粛している。大会、リーグ戦も中止であり、全体練習も行っていない状況だ。政府、各自治体からは人との接触、不要不急の外出を避けることが叫ばれている。さらに、東京、埼玉、千葉、神奈川ではゴールデンウイーク期間中に「いのちを守る STAY HOME週間」(4月25〜5月6日)が掲げられた。各球団ともスカウト活動を休止している。スカウトとは現場で選手の動きを視察することがすべてであり「テレワーク」では、成り立たない仕事である。

 在宅勤務においては、ドラフト対象選手の指導者に電話連絡して、現状を確認するしか情報収集の手立てはない。あとは、過去の映像や動画を見てイメージを膨らませる作業になるがやはり、業務には限界がある。当面は終息を待つしかない。じっと我慢するしかないのが、現実である。

最も困難なのが高校生のジャッジ


 NPBの支配下選手登録は70人が上限である。仮にシーズンが通常開催できなかった場合、例年のような「戦力外通告」が実施されるのか。力の限界を感じて、自ら「引退」の道を選ぶ選手はいるかもしれないが、試合をしていない中で「クビ宣告」を下すのは、球団側としても難しい。すなわち「IN」「OUT」の理屈でいけば、「OUT」の数が少なければ、新戦力を補強する必要がなくなる。ドラフト対象選手としては、例年よりも“狭き門”になる可能性がある。

 さらに、厳しい評価となりそうなのが高校生である。3月のセンバツ甲子園が史上初の中止となり、4月に入っても全47都道府県大会(沖縄は準々決勝で打ち切り)、全9地区大会が中止となった。アピールの場が奪われてしまったのは、かなりの痛手だ。特に甲子園でのパフォーマンスは「評価」としては重要な項目となる。いくら素晴らしいポテンシャルがあっても、大観衆の中で力を発揮できるか否かが、判断基準の一つになるからだ。

 高校生の新チームは前年秋から始動しているが、その時期は、前年ドラフトの大詰めの段階。各地区の担当スカウトは可能な限りの視察をし、本格的な視察がスタートするのはドラフト後の11月、明治神宮大会というのが毎年の流れだ。春の公式戦は、高校生としては一冬を越えての成果を試す場。スカウトにとっても成長を確認する機会で、夏につながるか(リストに残るか)の「一次テスト」でもある。夏になって急成長してくるケースもあるが、春からの過程を見ていないと最終ジャッジはできないという。

通常ならば甲子園で行われる春のセンバツに各球団スカウトが集結するはずだったが……/写真は2019年のセンバツ


 仮に夏の地方大会の開催も厳しくなると、プロを志望する高校生は、完全に披露する場が消滅してしまう。

 18年のドラフトの第1回1巡目入札(1位)は高校生3人(大阪桐蔭高・根尾昂=4球団=中日、報徳学園高・小園海斗=4球団=広島、大阪桐蔭高・藤原恭大=3球団=ロッテ)に11球団が集中した。19年も高校生3人(大船渡高・佐々木朗希=4球団=ロッテ、星稜高・奥川恭伸=3球団=ヤクルト、東邦高・石川昂弥=3球団=中日)を10球団が指名している(桐蔭学園高・森敬斗DeNAの単独指名)。振り返れば17年も早実・清宮幸太郎(現日本ハム)に高校生最多タイの7球団が競合したほか、広陵高・中村奨成(現広島)に2球団重複と、最近3年間は「高校生ドラフト」だった。

 20年については高校生の上位指名を回避し、大学生と社会人にシフトチェンジしていくのが現実的かもしれない。高校生を前年秋の評価により、1位指名に踏み切るのはあまりに、リスクが大きい。大学生、社会人は、各球団とも前年までの“蓄積”があり、その先の青写真が描ける。また、3月末までではあるが、キャンプ、オープン戦を視察しておりイメージがわく。

 新型コロナウイルスの終息はいつになるかは不明だが、政府からの自粛要請が「解除」された時点で、2020年ドラフトは一気に加速する。とはいえ、例年のように仕事を進められる保証はない。いずれにしても、かつてない形で「11.5」を迎えるのは間違いない。イレギュラーだからこそ、球団のカラーが明確に出る。まさしくスカウトの眼力、手腕が問われるのだ。

HOT TOPICS

HOT TOPICS

球界の気になる動きを週刊ベースボール編集部がピックアップ。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング