2021年要注目のフレッシュな“力”に迫る連載インタビュー『Power Push』。第2回は1年目の昨季、主にリリーフで33試合に登板し3勝1敗4H、防御率1.80と好投したDeNAの伊勢大夢にスポットを当てる。右サイドから最速153キロを投げ込む、2年目の現在地に迫る。 取材・構成=滝川和臣 写真=井田新輔、中島奈津子、BBM 本調子でないストレート
2月18日、阪神との練習試合(宜野湾)の9回に4番手でマウンドに上がった伊勢大夢は、先頭の八番・坂本誠志郎に左本塁打を運ばれると、二死からは三番に座った新人・佐藤輝明にスコアボード越えの特大2ランを浴びた。ゲームセットから約40分後に始まったインタビューは当然、試合の反省会となった。 ──今日の練習試合の感想は?
伊勢 紅白戦以来(2月7日、宜野湾)の実戦登板でしたが、まだ100パーセントの状態には近づけていないですね。体のキレ自体はいい感じなんですが、上半身と下半身のバランスがかみあっていない感覚です。
──ボールもバラついていた印象がありました。
伊勢 強風が吹く中での登板でしたが、シーズン中も横浜スタジアムでは似たようなコンディションで投げることはよくあるわけで、その中でもきっちりと投げられないと。今日の反省を生かしていきたいです。今日が底辺の出来で、あとはしっかり上げていくだけです。
──本塁打を2本浴びたことよりも、自分のボールが投げられなかったことが課題だった?
伊勢 「差し込んだな」と思ったボールがスタンドに運ばれてしまった。佐藤君に打たれた一発もイメージとしては、押し込んだ感覚はあったんですが、とらえられた。打者からすれば僕のボールが来ていないから、運ぶことができたということです。イメージと現実のギャップを詰めていきたいです。
──ルーキーイヤーの昨年は真っすぐで空振りを奪っていましたが、現時点ではまだまだだと。
伊勢 コンディションは毎日変わるので、良いときもあるし、悪いときもあります。良い状態をコンスタントに出せるようにしないと、昨年ほどの成績はついてきません。昨シーズンを通していろいろな選手に僕の球筋は見られているので、ブルペンから意識を変えていかないと厳しいかなと思っています。
──では、2年目のキャンプは順調とは言えない?
伊勢 昨年は交通事故(1月に車で衝突事故。打撲やむち打ちの症状で出遅れた)があったので、それに比べれば順調なんでしょうが……。ルーキーイヤーは初めてのキャンプということもあり、スローペースでやらせていただきました。でも今年は2年目の若手として、早めに投げることが分かっていたにもかかわらず、実際には(体が)つくれていないので、そこは準備が足りなかったのかなと。来年以降の課題ですね。
──つくれていないと言うのは、自主トレで追い込めなかった?
伊勢 沖縄に来る前にブルペンにも入り、十分だと思ってキャンプインしましたが実際に力が出せていないので、準備が足りなかったのだと思います。あとは自分のイメージどおりのボールが投げられていない。これからどう詰めていくのか。いろんな方向性があると思うんです。ちょっとしたことでよくなることもあるし、大きく変えないとよくならない場合もあります。いろいろ試している時期でもあります。
──昨年はリリーフを中心に33試合に登板して防御率1.80。軸となるのは威力のある真っすぐでした。
伊勢 今日の登板では、捕手の
山本祐大にストレートを7割くらいで攻めていこうと事前に話していた中で、どうしても直球で押し切れず、昨年のイメージで空振りが取れていたボールもファウルにされていた。空振りが取れないと一軍で通用するのは難しいし、イメージどおり投げられていないのが投手として、苦しいところです。
──理想とするのは、どんな真っすぐですか。
伊勢 イメージでは昨年、阪神を引退された
藤川球児さんのストレートです。投球のほぼ大半を占めて、スプリットなど変化球もストレートを際立たせていました。僕はまだ変化球が足りないということもあり、今年からはチェンジアップを多く投げています。現時点ではまだ腕が振り切れずに、ストレートを生かすところまで完成できていない。でも、煮詰めていけば効果的に使えるとは思っています。ブルペンではそこそこ良いのですが、実際に試合で打者が立った状態だとまだまだ。試合中に打者の反応も見ながら使えるくらい、自分のものにしていきたいです。
──入団前に、恩師である明大・善波(達也)前監督と話す機会があり、伊勢投手に関して「左打者のアウトコースへの変化球がないとプロで苦労する」とおっしゃっていました。
伊勢 その左打者対策として、今年はチェンジアップを使っていくことをテーマにしていました。でも、いろんな変化球に手を出し過ぎて真っすぐの力が落ちてしまったら、どうしようもありません。真っすぐがなくなったら、僕はただの投手になってしまいますから。その部分は変えずにやるつもりです。
──あくまでもストレートが投球の軸となる。
伊勢 はい。真っすぐが5割以上を占めても抑えられることをイメージしています。やり切りたいです。
厳しい場面で投げるために

ルーキーイヤーはリリーフながら終盤に3勝をマーク。10月28日の巨人戦では2回1失点の好投で勝利投手となり、お立ち台にも上がった[写真右。左は捕手の伊藤光]
プロ1年目は三嶋一輝、山崎康晃ら先輩投手の姿を見てリリーバーとしての経験を積んだ。当初はビハインドの展開での登板が多かったが、徐々に信頼を勝ち得ると、シーズン終盤には勝ちパターンでマウンドに上がる機会も増えた。2年目の今季は左腕のエスコバーと並び、セットアッパー候補にも名前が挙げられている。 ──昨季は終盤に疲れも出ていました。何か対策は?
伊勢 ルーキーイヤーは、シーズンのサイクルも分からずに投げていたのが正直なところですが、2年目となり、リリーフの流れはつかめています。遠征先のホテルや移動をどう過ごすか、いつマッサージをして、何時に寝るのか。昨シーズン終盤は疲労が出た中で学ぶことができたし、こうすればまだ投げられるな、というのが感じられました。それを今年はシーズン通してやれば、終盤に息切れすることはなくなると思っています。私生活も含めて、経験を生かしていくつもりです。
──マウンドでは表情があまり変わらない印象ですが、内心はいかがですか?
伊勢 どうですかね。僕も打たれたら心の中では「くそ!」と思いますよ。昨年は自分の中で納得のいくボールが投げられていたので、見方によっては淡々と投げていたように見えたかもしれませんが、今後もっと厳しい場面で投げることがあるとすれば、おのずと気持ちも表に出てくるかもしれません。昨年はピンチになる前にマウンドを降りることも多かった。そうした場面を任せてもらえるようにアピールしていきたいですね。
──昨季のデータを振り返ると、左打者に被打率.302とよく打たれました(右打者は.167)。このあたりが課題ですか。
伊勢 左打者でも同じ打者に打たれるケースが多かったです。これは右打者にも言えることですが、苦手意識を引きずっていた面もあります。
──九州学院高の後輩、
村上宗隆選手(
ヤクルト)に対しては被打率.750と相性がよくありませんでした。
伊勢 そうですね。村上に関しては苦手意識はありませんが、普通に打率3割を残している打者ですから。でも、そう言っていたら始まらないので、しっかり抑えていきたいです。あのクラスの打者に自信を持って投げ込めるボールを磨くこと。現時点でそこまでボールが来ておらず、自信のないボールは打たれてしまう。自信のあるボールを、気持ちを込めて投げることですね。
──同チームということでは、明大でチームメートだった
広島の
森下暢仁選手とは連絡を取ったりするのですか。
伊勢 ルーキーイヤーの昨年はお互いに一軍で心細い部分もあり、頻繁に連絡を取ったりしていましたけど、お互いにチームに溶け込めていることもあって、最近は少なくなってきました。
──さらに明大からは、後輩の
入江大生選手(ドラフト1位)がDeNAに入団しました。アドバイスなどはしていますか。
伊勢 新人合同自主トレで最初からペースを上げていくよりも、徐々に上げていくようにとは言いました。特にドラフト1位は周囲からも注目されるので。ゆっくり着実にやっていけば、結果はついてくると思います。
──シーズン中は、先発した入江選手から伊勢選手へのリレーもあるかもしれませんね。
伊勢 そうですね。それが敗戦のリレーじゃないといいですけど(笑)。勝っている展開で僕もバ
トンがもらえる立場にならないと。
──中継ぎでは
パットン選手が退団し、エスコバー選手の来日も決まっていません。シーズン開幕直後は、伊勢選手の役割がより重要になってきそうです。
伊勢 中継ぎ陣はチームの勝利のために誇りを持って投げています。僕も先輩たちの背中を必死で追いかけていきたいです。昨年はビハインドの展開での登板が多くて、シーズン終盤に勝っている展開でも投げさせてもらいましたが、やはりリードしている展開は緊張感が全然違った。そういう場面でも投げさせてもらえるようにアピールして、つかみにいきたいです。
──今シーズン、数字の目標は定めていますか。
伊勢 昨年目標にして達成できなかった「50試合登板」を目指したいです。シーズンを通して投げること、そこで結果を出すことの大変さは身に染みました。その中でチームの勝利に貢献したいなと。開幕までまだ少し時間があるので、しっかり調子を上げていきます。

最大の武器であるストレートを軸に、チェンジアップに磨きをかけ2年目のシーズンに臨む
DB担 RECOMMEND
【21年のターゲット】50試合登板&30ホールド 【特殊能力】剛腕・右サイド 
編集部分析[5段階評価]
昨季は「ショートスターター」として先発した試合もあったが、主にリリーフで33試合に投げた。序盤の出遅れ、120試合に縮小されたシーズンだったことを考えれば、本人が数字を挙げる「50試合登板」には十分に手は届く。その上で今季は、勝ちパターンの一角を担うことが期待されている。
石田健大、
国吉佑樹、山崎康晃、三嶋一輝らとともに、伊勢が30ホールドを稼ぐことができれば、必然的にリリーフ陣は安定度を増す。
PROFILE いせ・ひろむ●1998年3月7日生まれ。熊本県出身。182cm90kg。右投右打。九州学院高ではエースとして2度甲子園に出場。3年夏には2学年下の村上宗隆(ヤクルト)とともに聖地でプレー。明大では先発・リリーフとして森下暢仁(広島)らと大学日本一。2020年ドラフト3位でDeNAに入団すると6月に初登板を果たし、新人らしからぬ堂々としたマウンドさばきで躍動。右サイドからの威力ある直球を武器に3勝1敗0S4H、防御率1.80と中継ぎで好成績を残した。2年目の今季は勝ちパターン入りが期待される。