決して目立つ存在ではない。ただ、相手バッテリーには脅威を与え、仲間からは信頼を得る。
中村晃はそんなバッターだ。象徴的な試合がある。オールスター明けの初戦となった7月21日の
ロッテ戦(ヤフオクドーム)。チームはルーキー・石川に試合前まで3試合0勝2敗、防御率0.00とほぼ完璧にやられていた。
反撃ののろしは2点リードされた4回二死一、三塁。高めのつり球を左前適時打し、1点差に詰め寄った。ハイライトは松中の同点犠飛でヤフオクドームが、どっと沸いた直後の6回二死二塁だ。天敵となりつつあった石川から右翼線へ決勝の適時二塁打。「前のカードで悔しい負け方をして福岡に帰ってきた。やり返さないといけないと思った」。球宴前最後の3連戦だった7月14日のロッテ戦(QVCマリン)で、石川に3打数無安打に抑えられた雪辱を果たすと、ここから3試合連続タイムリーとチャンスで強さを見せた。
8月7日時点で得点圏打率.363はチームトップの数字だ。一番打者だが、52打点は43打点の四番・
李大浩を上回るチーム3位。
藤本博史打撃コーチは「練習から考えてやっているし、出塁するだけじゃなく、打点も取れる」と絶大な信頼を寄せる。
勝負強さの要因は“家康タイプ”の打撃にある。ボールをとらえに行くのではなく、とらえられるボールが来るまでひたすら待つ。「フリー打撃ではファウルを打つ練習もします」。とことん待てる忍耐が、最大の長所だ。もちろん、一番打者として必須な出塁率も.362と高い数字を維持している。12球団No.1のチーム打率を誇る最強打線のリードオフマンとして、ふさわしい活躍である。