重要な局面で腹をくくり、腕を振った。5月31日の
西武戦(西武プリンス)、3点差に詰め寄られた8回一死満塁。左打者の木村昇を迎えた場面で
ラミレス監督は
田中健二朗を
コールした。すると西武は右の代打、竹原を起用。「(竹原の代打は)頭に入っていた」という田中は初球から内角直球を続けて見逃しとファウルで追い込み、3球目は外角に直球を外した。4球目は内角直球でファウル。5球目のスライダーは内角にやや外れ、ハーフスイングも取ってもらえず2-2。6球目のスライダーはさらに内角に外れた。
フルカウントとなり、球場の盛り上がりは最高潮。そんな中、左腕は冷静だった。「ヒットで2点入るくらいなら、四球で1点でもいい」。点差を考え、「チームが勝つためにはどうするべきかを優先した」。7球目は「ボールでもいい」と腕を振り、低めのスライダーで空振り三振に仕留めた。
伏線があった。ベース上を通過せず、空振りを奪えなかった5球目のスライダーを見た田中は「低く、ベース上に投げれば振ってくる」と7球目を「ストライクからボールになる」高さとコースに完璧に制球し、狙いどおり空振りを奪った。続く岡田も中飛に仕留め、ピンチを脱した。
今季、相手の右、左関係なく起用される。
「使ってもらえているので、結果を出さないと。そういう場面で投げられるのは楽しいです」
心身ともに充実した左腕の魅力が凝縮されたシーンだった。