
荻野は1年間フル出場で盗塁王を目指す
無冠であることが、不思議に思える能力である。プロ9年目の
荻野貴司は例年にない決意を持ってシーズンを迎える。
「盗塁はチャンスがあれば常にスタートしようと思います。井口さんにも“走れ”と言われていますし、盗塁数は増えますね」
ルーキーイヤーだった2010年はチームの外野手としては25年ぶりの開幕スタメンを勝ち取り、開幕から46試合で25盗塁とハイペースで走りまくっていた。「あのころは何も考えず、突っ走っていた」と荻野。5月に右ヒザを負傷すると、その後も故障が代名詞のようになり、1年間まともに戦ったシーズンはなかった。
そこで16年オフには「ケガをゼロにする」という願いを込めて、背番号を「4」から「0」に変更。地道なケアを続けてきたこともあるが、不思議と17年は初めて故障なく1年間を乗り切った。さらに9、10月だけで15盗塁を記録し、13年に並ぶ自己最多タイの26盗塁と復活の兆しも見えてきた。
今季、追い風が吹いた。井口監督が就任し、金森打撃コーチが6年ぶりに復帰したのだ。1年目の10年に出会い、バットを短く持ち体の近くでスイングする「金森理論」をたたき込まれた。故障離脱するまでの1年目の打率は.326。今季、再タッグを組むとオープン戦は開幕から8試合連続安打。「絶好調まではいかないけど、しっかり振れています」とニヤリと笑う。
井口監督の掲げる「走塁改革」。斬り込み隊長を任される荻野の快足が、何度も見られそうだ。
写真=川口洋邦