実力も人気も右肩上がりの“ふじっしー”
強烈なインパクトを残した。強打者相手にもひるむことなく真っ向勝負で腕を振る。2年目の
藤嶋健人が、先輩を凌ぐ勢いで頭角を現した。
大先輩の窮地を救った。6月17日の
西武戦(メットライフドーム)。先発は古巣と初めて対戦するはずの松坂だった。しかし、松坂は試合直前に背中のねん挫を発症し、緊急回避。試合開始15分前に
朝倉健太投手コーチから、先発を告げられた。
緊張する暇もなかった。しかし、ふたを開けてみれば、12球団最強とも言える西武打線に9安打されながら、6回2失点でプロ初勝利を飾った。「必死だったのであまり覚えていません。一人ひとりしっかり投げることだけ考えていきました。うれしいです」。松坂見たさに集まった3万人超のファンの視線を釘付けにした。
藤嶋の長所は「投げっぷりの良さ」と、周囲も口をそろえる。時には相手をのけ反らせるほどの内角高めに投げ込んだり、フルカウントから割り切って低めの変化球を振らせたり。「ピンチ以外でもしっかり抑えられるように」と20歳は貪欲だ。
藤嶋を奮い立たせるのは、高卒2年目の同期への反骨心だ。同学年には侍ジャパン高校日本代表でもチームメートだった、
楽天・
藤平尚真、
ヤクルト・
寺島成輝、
広島・
高橋昂也、西武・
今井達也と、「高校ビッグ4」と呼ばれた好投手がずらり。
8月26日の広島戦(マツダ広島)では、初めて高橋昂と投げ合った。「昂也より長くマウンドにいたかった」と闘志をむき出しに、7回1失点の好投で2勝目をマークした。気づけば先発ローテの一角を任された若き右腕。竜の将来を担う礎を、確実に築いている。
写真=BBM