
勝負どころを逃さない
燕のスピードスターは、1点を争う緊迫した場面で登場する。プロ13年目の
上田剛史だ。ここぞの場面で自慢の足を使い、相手に揺さぶりをかけることが「本業」。体だけでなく思考の準備も怠らず、フィールドに向かう。
「(代走で)行くときって、ホームにかえってきてほしいからであって、やっぱり相手にプレッシャーをかけてほしいということ。状況を見極めて、求められたことを全うするには、自分が絶対やったらいけないことを考えますね」
武器を最大限生かすために、頭の中は常に冷静だ。ライナー性の打球では帰塁する、一走で二ゴロが打たれた際は二塁手にタッチをされないなど、基本的な禁止事項からあらためて確認。「『こういう展開になったらこういう走塁をしよう』とか、いろいろなシチュエーションを自分の頭の中に描いています」と頭の中で整理している。
だが、次の塁を狙う熱い気持ちも忘れない。野手の動きや打球の角度、スピードなどを見て瞬時に判断を下す。「次の塁をとれるかとれないかは一瞬の判断なので」と常に意識の中に置いている。
「相棒」であるアンダーアーマー社製のスパイクにもこだわりを持つ。なるべく軽量化されたもので、ドームなど人工芝の際は靴底がポイントのもの、土の球場の際は刃のものを使うという。通算盗塁数は69だが、失敗数は21で盗塁成功率は.767と高い。勝利のためには必ずや上田の足が必要になる。
写真=BBM