リード面でも若い投手をけん引する
巻き返しを期し、それを現実にした。頂点とどん底の二極を体験したから、
戸柱恭孝に慢心はなかった。プロ5年目。昨年までなら考えられなかったような充実ぶりだ。シーズン前は
伊藤光で盤石だった正捕手争い。初の先発マスクは開幕3戦目(6月21日、
広島戦=横浜)に訪れた。チームは連敗スタート。先発の柱として成長することになる
平良拳太郎や救援陣と呼吸を合わせ、2対1のロースコアで今季初勝利へ導いた。
DeNAが長く固定できなかったポジション。即戦力として2016年にドラフト4位で入団し、ルーキーイヤーから124試合に出場した。新人捕手では球団初の開幕スタメン。翌年も112試合と地位を固め、2年連続で球宴にも選出された。順風満帆のキャリア。そこからの大不振は、
ラミレス監督にとっても計算外だったはずだ。一昨年25試合、昨年も45試合。「僕は試合に出させてもらっていた立場。出て当たり前みたいな余裕とか、おごりみたいなものがあったと思います」とは二軍暮らしだった頃の言葉だ。折れかけた心を前へ向かせてくれた1人が、当時の
万永貴司二軍監督。「ここで腐ったらいけない。お前は絶対、このチームに必要な人間だから」と励ましを受け、再び立ち上がった。
「点を取られたら二軍。打てなくなったら二軍……」とこれまでのマイナス思考を排除した。原点回帰。「1試合1試合、1球1球をムダにできない」と言い聞かせてきた。平良や
大貫晋一の成長を下支え。打撃面は2割前後と発展途上でも、得点圏では打率.320と勝負強さも見逃せない。戻りつつある信頼と自信。まだ、V字回復の途中だ。
写真=榎本郁也