
8月には月間MVPを初受賞するなど充実のシーズンを過ごしている
もう勢いだけとは言わせない。開幕から
DeNAの四番に起用され続けている
佐野恵太のバットは、8月に入るとさらなる加速を見せた。月間成績はリーグ3位の打率.346をマークし、6本塁打、22打点は堂々のトップだ。ホームゲームでお立ち台に上がることも実に3回。主砲と呼ぶにふさわしい打棒で、開幕前の看板だったソト、ロペス、
オースティンの助っ人大砲トリオが振るわないチームを引っ張った。
シーズン打率でも3割5分を超え
ヤクルトの
村上宗隆らとハイレベルな首位打者争いを展開。安打数は独走状態だ。昨季までレギュラー経験もなかった25歳は連日、試合前の練習で
ラミレス監督から“四番道”をたたき込まれている。それは3ボール0ストライクからも打ちにいく特権だったり、その日の先発投手に対するアプローチに関する考え方だったりするそうだが、試合を重ねて佐野の打撃は熟練味を増している。
象徴的な打席がある。8月8日のヤクルト戦(神宮)で
小川泰弘から放った決勝2ランは、粘った末の12球目を仕留めている。佐野はフルカウントから6球ファウルする間に内角、外角と揺さぶりをかけた速球を難なくカット。最後にヤクルトバッテリーが選択した外角から曲げるスライダーは、意表を突くことに賭けたような甘い球だった。
この一連の流れを、ラミレス監督は「パーフェクトアプローチだ。あの打席を見て、
巨人の菅野(
菅野智之)からも粘ってホームランしたことを思い出した」と絶賛した。9月に入り、対戦チームの内角攻めが顕著に増えている。それも「ポスト筒香」抜てきと思われた佐野が、真の四番になった証拠だ。
写真=大賀章好