多彩な球種を駆使して1年間投げきり、パ新人では唯一の2ケタ勝利となる10勝をマーク
伊藤大海のスライダーは、プロの世界でも一級品だった。新人ながら開幕ローテーション入りを果たした春先は、その伝家の宝刀で快記録を達成した。デビュー戦の初回から4試合目の先発となった4月21日
ロッテ戦(ZOZOマリン)の4回まで23イニング連続奪三振。1980年の
木田勇に並ぶ新人球団記録&プロ野球新人記録に肩を並べた。
プロ入り前から磨き上げたウイニングショットだ。どんな変化球でも操れる器用さに加えて研究熱心。「一番は腕がしっかり振れているということ」と、打者に直球との判別をしづらくした上で「スライダーと分かりきったカウントでも手を出してくれる」軌道に乗せる。アマチュア時代に理想を体現するために追求していく中で手に入れた決め球だ。
そのスライダーを駆使してインパクト十分の結果を残したことで、今夏の東京五輪で侍ジャパンメンバーに追加招集。国際舞台でも、大きく曲がって空振りを誘うスライダーは有効的だった。また、持ち前の強気な姿勢も国民の心をつかみ、大舞台でも好投を続けて金メダル獲得に貢献した伊藤大海の名前は、一気に全国区となった。
シーズン後半は投手としての進化を目指して、スライダーの割合を減らす挑戦もした。
「どうしてもアレ(スライダー)だけに頼ってしまうと引き出しが見えてこない。試行錯誤しながら、いろんなボールを試して1年間しっかり投げきれた」
投球の幅も手に入れながら規定投球回に到達し、勝ち星も10勝。伝家の宝刀は来季も威力を発揮しそうだ。
写真=BBM