
ステファノ・チェンシは開幕約2週間を前にし、肩の故障のため、ロースターから外れた。最速99マイル(約159キロ)を投じる実力のある投手だけに、チームとしても痛手に違いない/写真=石原豊一
第28回 WBSC U-18ワールドカップは9月1日(現地時間)からカナダ・サンダーベイで、12カ国・地域が参加して行われる。日本は過去2大会で準優勝と悲願の世界一を目指しているが、欧州の出場チームの横顔を2回にわたり紹介していく。
今や世界大会の常連で、オランダとヨーロッパの覇を競うイタリアだが、2010年にプロリーグとして発足したイタリアン・ベースボールリーグの廃止の方向性が決定するなど、サッカー大国の中での強化にはなかなか苦戦しているようだ。
ほかのスポーツと同じく、各クラブが、トップチームの下に年代別のジュニアチームを組織し、育成している。クラブでその才能を見込まれた選手は、野球連盟が運営するアカデミーに送られ、ここで寮生活を送りながら学校に通い、野球の英才教育を受ける。夏休みが3カ月もあるという学校事情は、この期間、野球に専念でき、プロアマの境界のない事情も相まって、才能を見込まれた選手は、強豪クラブとプロ契約を結んでプレーすることも可能である。
残念ながら肩の故障のため、今回の最終ロースターから漏れてしまったが、パルマと今年初めてプロ契約を結んだステファノ・チェンシ投手(17歳)は、こう言う。
「地方の小さなクラブでプレーしていましたが、アカデミーに入って、その後パルマとプロ契約を結びました。試合は金、土の週末だけなので、アカデミーのあるティレニア(ピサ近郊の町)から列車で試合のある町に自分で移動しています。金曜の試合の後はチームと一緒にバスで帰って球団の寮に泊まります」
また、このティレニアでは、例年夏にヨーロッパ、アフリカでスカウトしてきた選手を集めてMLBによるアカデミーリーグが開催。ここで目についた者は、MLB球団との契約を結べる。現在5年制の高校の4年生で、卒業後はアメリカの大学でのプレーを考えているチェンシも、アメリカでプロ契約希望だ。国際大会は絶好のアピールの場である。
野球放送を観る習慣なく早実・清宮の情報も皆無
かと言って、クラブや野球連盟にとって、選手がプロ契約を結べるかどうかはあまり関心事ではない。運営側の目標はあくまで、競技の活性化につながる国際大会での躍進。そのための努力を行っている。イタリア野球連盟のマーケティング広報部長のマルコ・ランディ氏は、国際大会の情報収集について、こう言う。
「WBCなどプロも参加する大会では、ビデオ収集による対策を練っています。しかし、U-18となると難しいです。日本には大きな全国大会があるのは知っていますが、ロースターの確定も遅いので、ほとんどぶっつけ本番になると思います」
ちなみにイタリアの野球界では、早実・
清宮幸太郎(3年)の名どころか、プロのトップ選手の名すら知られていない。日本の野球選手で知られているのは「サダハル・オー」と、かつて
オリックスでプレーしていたアレックス・
マエストリの名だけ。そもそもこの国では専門チャンネルでメジャー・リーグの放送がなされているものの、テレビで野球を観る習慣があまりない。先述のチェンシも「あこがれの野球選手というのはいません。だからメジャー・リーグの選手の名もほぼ知りません」
未知の国と言っていいヨーロッパの強豪だが運営側、選手側の思惑は一致せずとも、上位進出の目標は変わらない。(取材・文=石原豊一)