
村田が戦力外になって岡本にはチャンス。秋から冬、そして春を越えて大きく成長してほしい/写真=大泉謙也
今年のドラフトの超目玉だった早実・
清宮幸太郎は7球団が競合した結果、
日本ハムが交渉権を獲得した。クジを引いたのは、
巨人時代の後輩で、教え子でもある
木田優夫GM補佐。私にとっては、違った意味で印象深いドラフト会議になった。清宮君だけでなく、ドラフトにかかった選手たちは、希望に胸をふくらませて、来春のキャンプを待っているところだろう。
来る人がいる一方、今年もまた数多くの選手たちがユニフォームを脱いだ。やり尽くして、満足しながら第二の人生に踏み出す者、夢半ばにして球界を去らざるを得なかった者。さまざまな人生模様が描かれるのもこの時期だ。
古巣の巨人では、
村田修一が自由契約になった。決して衰えたわけではない。三塁の守備でもまだゼニが取れる選手だと思う。仮に来年も巨人でプレーしたとしても、
高橋由伸監督は村田を使うかもしれない。
しかし、Aクラスも逃し、若手も育っていない巨人は、
岡本和真ら次代の戦力を作っていくことが命題になる。力が分かっているベテランは、いざというときに頼りにしたくなるから、ベンチにいたらどうしても使いたくなる。それが監督というものだ。だから、思い切って村田を“切った”のだと思う。戦力外の判断をし、自由契約にしたのは、村田がまだ現役としてやりたいと考えているからだろう。他球団とフリーに交渉するためには「自由契約選手」の身分が必要だから、これは球団の温情だろう。
村田をあえて「戦力外」とした巨人の狙いはただ1つ。岡本を三塁で使いたいからだ。春先は、一、三塁、左翼を守ったりしていたが、守りも村田のレベルからはほど遠く、バッティングも一軍に定着するまでの力がなかった。しかし、ファームでは堂々と四番を張り、イースタン・リーグの終盤戦では一皮むけたような活躍をした。「今度こそ」の期待は高い。村田を戦力外と判断したことが正解かどうかのカギは、岡本が握っている。
岡本にはひと言だけ言っておきたい。彼のような長打力がある打者は「ツボを作る」ことが必要だ。もともと、そういうバッティングをしていたと思うのだが、いつの間にかすべてのボールを追いかけるようになっている。「このコースに来た球」「この高さに来た球」「この球種の球」なら確実に打てる、というバッティングを追い求めるべきだ。確かに守りはうまくないが、守備は首脳陣の忍耐次第。鍛えれば必ずうまくなる。この秋から冬にかけて、そして来春のキャンプ。岡本にとっては飛躍への大きなチャンスになる。
巨人ではもう1人、育成出身ながら、2009年には新人王になった
松本哲也が現役を終えた。ダイビングキャッチを売り物にして人気もあったが、今年は一軍昇格のチャンスもないままだった。山梨県の後輩ということもあって(山梨学院大付高出)、入団したときから注目していた。余談になるが、私が野球殿堂入りした年に山梨県からいただいた「山梨県イメージアップ大賞」を、2年後に彼ももらっている。村田も松本哲も、来年は“第二の人生”に踏み出すシーズンになる。現役時代に培った“巨人魂”で素晴らしい人生にしてもらいたい。
PROFILE 堀内恒夫/ほりうち・つねお●1948年1月16日生まれ。山梨県出身。甲府商高から66年ドラフト1位で巨人入団。1年目に16勝2敗、防御率1位の成績で新人王、沢村賞。72年には26勝をマークして最多勝、MVPに輝く。日本シリーズ11勝は1位タイ。83年現役引退。通算成績は560試合登板、203勝139敗6S、防御率3.27。巨人コーチを経て2004〜05年巨人監督を務めた。08年野球殿堂入り。現在、野球解説者。