一死走者三塁です。三塁走者は、打者のカウント2ボールからの3球目に突如、本塁に向かってスタートを切りました。これに気づいた投手は、投手板上の軸足を後方に外し、捕手に投げると、打者はこのボールに対してスイングし、センター前に打ち返しました。
ここで審判は、三塁走者にアウトを宣告しました。しかし、攻撃側は「アウトになるのは走者ではなく打者でないか」と抗議してきました。この場合の正しい判定はどうなるでしょうか? アウトになるのは間違いなく三塁走者です。走者アウトの項目を並べた規則7.08の(g)には以下のように記されています。
「0アウトまたは1アウトで、走者が得点しようとしたとき、打者が本塁における守備側のプレイを妨げた場合。2アウトであればインターフェアで打者がアウトになり、得点は記録されない」 さらに、この規則を具体的に説明する[注2]には、
「(前略)たとえば、捕手がボールを捕らえて走者に触球しようとするプレイを妨げたり、投手が投手板を正規にはずして、走者をアウトにしようとして送ったボール(投球でないボール)を打者が打ったりして、本塁の守備を妨げた場合には、妨害行為を行なった打者をアウトにしないで、守備の対象である走者をアウトにする規定である」 とあります。
めったに見ることのないプレーですが、1984年夏の甲子園大会でありました。8月14日に行われた新潟南対京都西の6回表、京都西の攻撃のときです。一死一、三塁で七番・木村和選手のスクイズをとっさに見抜いた新潟南の林投手は、プレートを外して本塁に送球してきました。
これに対して木村和選手は、ファウルで逃れようとバットを出してしまいました。しかし、これは投球ならぬ送球に手を出したものであり、守備妨害となります。従って三塁走者の平井選手にアウトが宣告されました。