一死走者三塁。打者は右翼、センター寄りへの飛球を打ちました。右翼手が捕球した次の瞬間です。追いかけてきた中堅手と激突し、ボールはグラブから飛び出てポーンと跳ね上がりましたが、地面に落ちる前に右翼手は捕球し直しました。三塁走者は初めに右翼手がボールをつかんだと見えたときにスタートを切って本塁を踏み、そのままベンチに戻っています。すると守備側は三塁に送球し、走者は右翼手が完全に捕球する前にスタートしたとして、アウトであると抗議してきました。このアピールは認められるでしょうか。 守備側の抗議は成立しません。捕球を定義している規則2.15の[原注]の冒頭には次のように記されています。
「野手がボールを地面に触れる前に捕らえれば、正規の捕球となる。その間、ジャッグルしたり、あるいは他の野手に触れることがあってもさしつかえない」 従って、右翼手の捕球は正当であります。
さらに続けて
「走者は、最初の野手が飛球に触れた瞬間から、塁を離れてさしつかえない」と規則書に太字で書かれていますから、守備側の言い分は成り立たないわけです。
もしも、完全に捕球する前にスタートすることが許されないと、右翼手は捕球した次の瞬間から、ボールをお手玉のようにして前進すれば、三塁走者はいつまでもスタートできないままになってしまいます。
90年5月5日の大洋-
阪神戦(横浜)で、このプレーがありました。6回表に阪神の
パリッシュ選手が右中間に高く舞い上がる飛球を打ったときです。大洋の
山崎賢一右翼手が捕球の瞬間に中堅手の
横谷彰将と激突したのですが、ポーンと跳ね上がったボールを落球する前に山崎がキャッチしました。
もしも、山崎が手放したボールを横谷が捕球していたら、右翼手に「補殺」、中堅手に「刺殺」が記録されるところでした。