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伊原春樹コラム

豪快なフォームと小気味いい投球。高校時代から球質も向上した右腕は今年確実にドラフト1位で消える

 

 高校野球の夏の地方大会が熱戦たけなわ、プロ野球はオールスターが終わり、後半戦がスタートしている。真夏に向け、野球界は盛り上がりを見せるが、社会人野球も熱い。7月15日に都市対抗が開幕し、東京ドームは歓喜と落胆が渦巻いている。

 思えば私が初めて都市対抗を観戦したのは芝浦工大4年時。1970年のことだから、もう46年も前のことになる。舞台は当然まだ後楽園球場で、目にしたのは確か日本石油対クラレ岡山だったと思う。試合もさることながら、最も印象に残ったのは応援だ。スタンドが一体となって声援を送り、選手を盛り上げる応援は感動ものだった。応援は年々華やかとなり、今では応援団にも賞が贈られるという。

 さて、今年も都市対抗の試合をチェックしていく中で最も目についたのは東京ガスの山岡泰輔投手だ。私は広島県出身でやはり地元の高校は気になる。山岡は高校3年時(2013年)、夏の広島大会決勝で瀬戸内高のエースとして広島新庄高の田口麗斗(現巨人)と投げ合った。しかし延長15回で決着がつかず翌日、再試合へ。ここで田口とのエース再対決に1対0で投げ勝ち、甲子園出場を果たした。

 田口ともどもプロで通用する素材だと思っていたが結局、山岡は高校から直接プロへ行かず、社会人の道を進んだ。その理由が「プロで一軍の最高の打者と勝負したかった。でも、まだ勝てるイメージがなかった」というもの。高校生ながら、冷静に自己分析ができており、非常に感心したものだ。

 その山岡のピッチングを久しぶりに見た。16日のNTT西日本戦だ。172センチと小柄な体格だが豪快な投球フォーム、小気味のいいピッチングは高校時代と変わらない。右腕から常時140キロ台中盤のストレートとキレのいいスライダーを投げ込んでいく。このスライダー、いわゆるタテのスライダーと本来の横滑りするスライダーの、ちょうど中間の変化をするが、これも素晴らしい曲がりをする。いわゆる“カースラ“だ。そのほかにカーブ、カットボール、シンカー、チェンジアップなど球種も多彩で打者も狙いを定めることができないのが強みだ。マウンドでは常に落ち着き、堂々としており、ピッチングにうまさを感じる。

相手に的を絞らせない投球で都市対抗初戦突破に貢献した山岡/写真=矢野寿明


 結局、この日もNTT西日本打線を手玉にとって、わずか95球で3安打完封勝利。確実に今秋、ドラフト1位で消える逸材だ。私としては巨人に入って、高校時代にライバルだった田口と今度は同じチームのユニフォームを着て切磋琢磨してもらうことを願う。

 さて、都市対抗はこれから佳境に入っていくが、山岡のほかにもドラフト候補となる金の卵が多数出場している。CS(Jスポーツ)で全試合が放送されているので、読者もぜひチェックしてもらいたい。

PROFILE
いはら・はるき●1949年1月18日生まれ。広島県出身。北川工高(現・府中東高)から芝浦工大を経て、71年ドラフト2位で西鉄入団。76年巨人に移籍し、78年古巣ライオンズに復帰して80年限りで現役引退。通算成績は450試合出場、打率.241、12本塁打、58打点。81〜99年に西武で守備走塁コーチを務め、西武黄金時代の名三塁コーチとして高い評価を受ける。2000年阪神コーチ、01年西武コーチから02〜03年西武監督、04年オリックス監督を歴任。07〜10年巨人ヘッドコーチを務め、14年は西武監督。現在は野球解説者として活躍している。
伊原春樹の野球の真髄

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座右の銘は野球道。野球評論家として存在感を放つ伊原春樹の連載コラム。

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