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野村克也の本格野球論

野村克也が語る“バッティング(1)”「努力には即効性がない」

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二軍監督に褒められた手のひらのマメ


 現役時代、自主トレからキャンプ、シーズン中に至るまで、私は人一倍素振りをしていた方だったと思う。

 私はプロ入り後2年間、二軍生活を送った。あるとき二軍監督が野手全員を集め、「手のひらを見せろ」と言う。先輩選手たちが次々手のひらを見せると、監督は言った。「なんだ、女の子みたいにきれいな手をしやがって」

 手のひらの“マメ”の検査だった。私はよくバットを振っていたから、堂々と監督に手を差し出した。「おお、お前はようバットを振っているな。みんな、野村の手をしっかり拝め。これがプロの手だ」

 監督に褒められたのは、それが初めてだった。しかも、野手全員の前で、である。私はそれがうれしくて、ますます一生懸命振り込んだ。そのときばかりは素振りの効果云々のためというより、マメを作るのが自己目的になってしまった感もあった。

 マメができた状態のまま、さらに振り込んでいくと、マメの上にまたマメができる。そこをある一定の厚さに保っておかないと、皮膚がマメごとめくれてしまう。そうなると膿が出て、しばらくバットを振れなくなるから、いつもカミソリでマメを適当な薄さまで削っていた。

 今はどの球団も雨天練習場を備え、個人練習もピッチングマシンでコンコン、コンコン打っている。そのため、若い選手はあまり素振りをしなくなってしまった。

 しかし、私はやはり素振りは大事だと思う。特に高卒でプロ入りした選手にとって、18歳から22、23歳ぐらいまでは基礎作りの段階だ。マシンを使ったバッティング練習よりも、まずはバットを振り込んでおく。バッティングは24、25歳からでいい。何事も、基礎を固めてから応用に入る。本来だったら基礎固めをすべきレベルの選手が、今はいきなり応用――つまりバッティングから始めてしまう傾向にある。

若き日の野村克也。素振りを繰り返し、打撃を形づくった


「ブッ」はよし、「ブ~ッ」はダメ


 素振りをするにあたって注意したいのは・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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