当連載の筆者である野村克也さんが2月11日にご逝去されました。ご生前の功績を偲びますとともに、編集部員一同、謹んで哀悼の意を表します。当連載に関しましてはご生前、野村さんが書きためていた原稿が残されておりましたので、今号(2020年3月16日号)まで続けさせていただきました。これまでのご愛読ありがとうございます。また、野村さん、本当に長い間ありがとうございました。(週刊ベースボール編集部) 南海時代の筆者の打撃の構え/写真=BBM
バッティングで大切な感覚を大事にするため素手で振る
今季の新外国人選手は、キャンプイン時点で31人。うち21人が、メジャー経験を持つ選手だという。
その中で、気になる選手がいた。
オリックスの
アダム・ジョーンズと
阪神の
ジャスティン・ボーアである。2人とも、フリーバッティングを素手で行っていたのだ。早速マスコミが珍しがって、話題にした。
今はバッティング用手袋を使わず、素手で打つ選手が皆無といっていいらしい。私のころは、素手が当たり前だった。
中西太さん(西鉄)、
王貞治、
長嶋茂雄(ともに
巨人)……みんな、そうだ。私のあとの世代でも
落合博満(
ロッテほか)、
掛布雅之(阪神)などは素手で打っていた。
落合とは、手袋について話をした記憶がある。バットは手の延長のようなもので、「バットを握ったときの微妙な感触が大切だから」手袋はしないと言っていた。まさに、そのとおりだ。
私もキャンプのとき、一度手袋をはめて打ってみた。だが、まったくダメだった。バッティングで一番大切なのは、感覚である。だから、手の平にバットがフィットしないと困る。私にとって手袋は、その妨げになるものだった。手袋がバッティングの邪魔をする。そんな感覚だった。
逆に手袋をする選手には、「手袋をしないと滑る」とか「打ち損じたとき、手が痛い」といった理由があるようだ。私は手に松ヤニをつければ十分滑り止めになったし、寒いときの練習以外では手に響くような感覚もなかった。
バット自体、あまり変えたこともなかったな。私は練習では日本製、試合ではアメリカ製のルイビルスラッガーと使い分けていた。ルイビルは弾きがよく、日本製で打つと、なんだか飛ばない気がしたのだ。日本製のものに比べて木が乾燥しているのか、その半面、ルイビルは折れやすかった。当時はバットも全部自分で買っていたから、もったいなくて練習では使えなかった。
こだわったのは・・・
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