さらに上のステージを目指し、2016年オフにプロ野球生活の礎を築いた北海道を離れ、伝統ある球団へ移籍する道を選んだ。巨人移籍後の2シーズン、ここまで自らが思い描いた活躍は見せられていない。それでも、陽岱鋼は前を向く。どんな試練に立たされても、31歳の挑戦者の胸に沸き立つ闘志の火が消えることはない。 文=西村海(読売新聞東京本社運動部) 写真=井田新輔、BBM あこがれは松井稼頭央
最近沈みがちだった陽岱鋼が、久しぶりに人懐っこい笑顔を見せた。9月17日の
中日戦(東京ドーム)。8回に代打で打席に立つと、
祖父江大輔の甘く入ったスライダーを振り抜いた打球はぐんぐんと伸び、バックスクリーン左へ飛び込んだ。今季10本目のアーチは通算100号本塁打だった。ゆっくりとダイヤモンドを回ると、目の前で十字を切り、両手を天に掲げるおなじみのポーズでホームを踏んだ。
「ホームランバッターじゃないから意識したことはないけど、自分にとって素晴らしい記録。自分自身を褒めてあげたいですね」。そう言ってはにかみ、続けた。
「最近打席に立てていない中、いつもどおり準備を続けてきました。チャンスをいただいて、結果を出さなければいけないと思っていました」。責任感の強い男の心には、メモリアルアーチのうれしさより、チームに貢献できていない悔しさが上回っていた。
巨人は昨季、
広島に200得点の差をつけられたため、今春のキャンプでは攻撃陣にハードなメニューが課せられた。7~8カ所のティー打撃を各12~15分ずつ、約2時間ぶっ続けでバットを振り続ける。苦しさに思わず声を上げる若手に混じって、陽の姿もあった。マメがつぶれて皮のむけた手を見ながら・・・
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