
誰にでも優しく、義理人情にもすごく厚い渡辺久信SD兼編成部長なくして私と西武の和解はありませんでした。ナベちゃんには人を自然に集めてしまう人間性があります/写真=BBM
4週分を使って雄星(
菊池雄星)とのトラブル、西武との和解までの話をさせてもらいましたが、和解への道筋を作ってくれたのが、先輩ながらナベちゃんと呼ばせてもらっている渡辺久信SD兼編成部長です。このコラムでも何度も話してきていますので、私とナベちゃんの関係は読者の皆さんも、もうよくご存じのことと思います。
先日このコラム担当の編集者にあることを聞かれたんです。今のナベちゃんの仕事は編成部長も兼ねています。西武黄金期を築いた
根本陸夫さん、これまた私が勝手に「おやじ」と呼ばせてもらっていた人なんですが、おやじと現在ナベちゃんがやっている仕事はほぼ同じ内容です。そこで、2人は何が同じで、何が違うのか? という質問でした。
根本のおやじは寝業師とも呼ばれた方ですが、自分が関わった人は、何とかして一生面倒を見ようとしてくれた人でした。私がくすぶっていたときに
巨人とのトレードを仕掛け、私が現在こうして野球界に携わっていられるのも、おやじのおかげです。
それと、おやじに一番迷惑をかけたのは、私じゃないですかね(笑)。二軍時代に門限を破って怒られるし、筋が通らないことがあれば、先輩であろうと食って掛かってケンカをしていましたから。
そういうときに限っておやじの家に呼ばれました。家に入ると必ず「すき焼き」が出てくるんです。私は食べる前に興奮して「あの●●はおかしいですよ。僕のほうが絶対に正しいんですから!」とおやじに向かって強い口調で言うんですが、それでも「食え!」しか言わない人でした。
ほかにもいろいろと文句を言ったんですが、結局「若いヤツは黙って言われたとおりにやればいいんだ」と言うだけでした。後でそのことの意味が分かるという感じだったんです(笑)。最初から言ってくれればいいのに、ということも思いましたね。
一方、ナベちゃんは……おやじももちろん優しかったですが、同じくらい優しくて、懐が深い。おやじと違う部分は、相手を説得できる「言葉」を持っているところです。若いころはかっこ良かったでしょ。クールな感じもすると思うんですが、義理と人情の人なんですよ。だから、ナベちゃんにはいろいろな人が支えようとしてついていくんです。だから「ナベ会」というものが自然発生で作られましたね。私の場合は、自ら「デーブ会やるぞ!」と言って、作りましたから大きな違いでしょ!(笑)
そのあたりを見ていると、寝業師と言われた根本のおやじと同じような人間の器の大きさを持っているのは、今の野球界ではナベちゃんしかいないと思います。この一連の件を含め、野球界で一番迷惑をかけているのは、この私なんですが、それでも現役時代と変わらないスタンスで付き合ってくれますし、今回のこともナベちゃんがいなければ和解してもらえなかったと思っています。
PROFILE 大久保博元/おおくぼ・ひろもと●1967年2月1日生まれ。茨城県出身。水戸商高から85年ドラフト1位で西武に入団。トレードで巨人入りした92年に15本塁打。95年現役引退。野球解説者やタレントを経て、2008年に西武コーチに就任し日本一に貢献。12年からは
楽天打撃コーチ、二軍監督を経て15年に一軍監督に就任した。15年限りで辞任し、16年から野球解説者をこなしながら新橋に居酒屋「肉蔵でーぶ」を経営している。