
8月23日のヤクルト戦(神宮)で3試合連続となる3ランを放った中谷。今後も彼のさらなる覚醒を見たい
6月のインタビューに答えてくれたときには「僕のせいで負けたという恐怖心はこれまで体験したことがないものでした」と語っていた
中谷将大。あれから約2カ月――。
7月27日の
DeNA戦(甲子園)から8月25日の
巨人戦(東京ドーム)までの約1カ月間、2試合を除いてはクリーンアップの五番に座っている。8月の月間成績(25日現在)は19安打5本塁打16打点、打率.257。特に8月22日からのヤクルト3連戦では3試合連続本塁打を放ち、スイープに大きく貢献した。そして現在ホームラン数「16」で球団単独トップとすっかり
阪神の主軸打者として成長したと言っていいだろう。
5月にも月間5本のホームランを打ったのだが、このときは三振21に2四球で出塁率.286と当たればホームランも確実性に欠けた打撃だった。それが6月から徐々にこの部分でも成長が見られていく。そして8月は14三振と減り、四球が11個と増え、出塁率も.341と急速な成長を見せはじめた。
「プロってこういう苦しさがあるんだと感じています。そこを克服していかなきゃと思っています」とインタビューの時点で負ける恐怖に打ち勝っていきたいと宣言していたのだが、成績で判断すると、自分のバットで負ける怖さを克服していっているようだ。
中谷の活躍で24日に
広島のマジックを消した阪神。これからも中谷が五番を担っていくだろう。その中で、首位・広島を追撃するためには彼がチャンスの場面で、いかに打てるかにかかっている。ヤクルト戦では見事勝利に貢献したが、宿敵・巨人との対戦ではチャンスの場面で凡打が続いた。
「中谷があの場面で打っていたらなあ」という声も期待の表れ。だが、それこそが中谷が感じていた「負けたときの恐怖心」。それを克服しつつある今、シーズン終盤、順位争いが続いていくだけに、主軸としてさらに厳しい場面で打席に立つことになる。そこでは大きなホームランを放ちチームの勝利に貢献し、負ける恐怖心をさらに克服してほしい。そしてそのバットで、広島追撃の狼煙をあげてくれるはずだ。
文=椎屋博幸 写真=大泉謙也