読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は外野守備編。回答者は現役時代にゴールデン・グラブ賞を3回獲得した、元ソフトバンクの柴原洋氏だ。 Q.プロ野球を見ていると、明らかに頭上を越える打球に対し、フェイクで捕球態勢を取り、打者や走者を惑わすようなプレーをする外野手がたまにいますが、効果はあるのでしょうか。(熊本県・18歳)
A.ランナー目線で考えても一定の効果はある。走塁のテクニックのない選手が引っ掛かりやすい。

イラスト=横山英史
まず始めに、“フェイク(ふりをする)”についてですが、これはランナーの立場から言うと、かなり厄介で効果があります。
当然、ランナーもリード、さらにセカンドリードを取った位置からバッターのインパクトの瞬間を見ているので、その打球がどれくらい飛ぶのか、ある程度の判断はつくものです。ところが、「よし、抜けた(外野手の頭上を越えた)」と思って走りながらその打球方向を確認した際に、外野手が捕球態勢に入っていたら、「あれ? 意外に詰まっていたのかな?」と自分の判断が信じられなくなる場合があるのです。
そうなると、全力で走り続けるわけにはいかず、「いや、でも抜けるだろ?」と思いつつも、少し減速して様子をうかがってしまう。そうすると、3つ進塁できたものが2つになり、2つできたものが1つになる。守備側にとっては大きいですよね。
ただ、最近の球場はフェンスが低くなってきているので、難しくなってきました。フェイクを取り入れるのは、あくまでフェンスが高い球場で、ダイレクトで当たって、跳ね返ってくることが確実な打球だけ。そういう球場だと、跳ね返りも強いですから、フェイクの捕球姿勢に入った位置で待っているだけで戻ってきますからね。
ところが、フェンスが低い球場では、その上部の金網などに当たり、真下に落ちてしまうこともあり、そうするとそこまで取りに行かねばならず、結局、多くの進塁を許すことにつながります。現在ではフェイクが可能なのは札幌ドーム、東京ドーム、ナゴヤドーム、京セラドームでしょうか。
昔はフェイクも練習をしていました。外野手としては何としてもランナーのスタートを遅らせ、特に一塁ランナーのホーム生還だけは阻止したいと思うものです。「抜かれたな」と判断したら、フェンスとの距離を瞬時に判断して、その分だけ下がり、「捕れますよ」と堂々と捕球態勢に入ってやるのです。完全にお芝居ですね。
越えた瞬間にパッと振り返って処理をする。これも外野手には必要なテクニックだと思います。ただ、優秀なランナーはこれにはだまされません。逆に、走塁のテクニックがないような選手は引っ掛かりやすいですね。
●柴原洋(しばはら・ひろし)
1974年5月23日生まれ。福岡県出身。北九州高から九州共立大を経て97年ドラフト3位でダイエー(現ソフトバンク)入団。11年現役引退。現役生活15年の通算成績は1452試合出場、打率.282、54本塁打、463打点、85盗塁。