ストレートを磨き覚醒

今年はマウンドで自信を感じる
先日、わがカープと山陰の先輩・
大野豊さんと『週ベ』の企画で対談をした。
相変わらず、シャキシャキのレタスみたいな人だったな(以前の大野さんの回を覚えてる?)。
俺が、ほんのちょっと「遅れそうです」と連絡したら、先に話を始めていた。
相変わらず、せっかちな人でした。
カープが投手王国と言われた1980年代から90年代初めくらいがテーマの対談だったけど、流れの中で、いまの投手陣の話にもなった。
まだ優勝は決まってないけど、もう決まったようなもんだから、2人で投手のMVPは誰と聞かれて挙げたのが、
大瀬良大地。まあ、ほかに誰って言われたら逆に困る。対抗馬は
フランスアだけだからね。
ほんと大瀬良は、よくなった。
2014年に期待されてカープに入り、1年目から10勝を挙げたけど、その後は抑えをやったり、故障もあったりで、正直伸び悩んでいた。
昨年は10勝2敗だから悪くはないんだけど、俺も大野さんも、「ここで終わるヤツじゃない」と思っていた。打線の援護で拾った勝利、落とさなかった試合も多かったからね。
俺は昨年の大瀬良を見ていて「気が抜けた炭酸飲料みたいだな」と思っていた。要は自分の持ち味であるストレートを生かしていない。
ツーシーム、カットボール、ツーシーム、スライダーでカーン! と打たれる。
言い方は悪いけど、「変化球ピッチャーに成り下がった」と思っていた。メジャーの投手みたいにすべての球を動かそうと思っていたのかもしれないけど、あんなにすごいフォーシームのストレートを持っているんだからもったいないよ。
あいつの持っているエンジンは3リッターくらい。さすがに3.5リッターの
巨人・
菅野智之にはかなわんが、その次くらいの排気量はある。
もっと打者を見下ろすくらいの気持ちになれたら大化けするのに、と歯がゆかった。
それが今年はいいね。いま15勝5敗で防御率2.21。沢村賞の基準も10完投以外は達成できそうだ。
この間、大瀬良と球場で話す機会があった。
「昨年は確かに変化球主体でしたが、今年はストレートを磨いてきました。すごく充実しています。打線には助けてもらっていますが、自分の思うような軌道の球を投げられています」
とはっきり言っていた。
今年は二段モーションにして、ためができたのもよかったのか、質のいいストレートを投げ込んでいる。
いまのカープの目標はリーグ3連覇じゃなく、もう日本一に向いているはず。そのキーマンというより、大瀬良がいなかったらCSも日本シリーズも戦えないと思うよ。
チームも分かっているから、優勝が決まったら、体調管理をさせながら無理はさせないだろうね。ただ、残り試合も多いし、いまの状態が続けば、20勝もいけるんじゃないかな。CSもファーストステージからじゃないし、ぎりぎりまで投げられるしね。
俺は3年目の83年に15勝して、そのときは「いつか20勝できたらいいな」と思っていたけど、結局、それがキャリアハイの勝ち星になってしまった。ピッチャーは、なかなか年間通して好調というシーズンは送れない。いくらいい投手でも、なかなか20勝は達成できるものじゃないんだ。
しかもいまは打高投低の時代だしね。大瀬良、次があると思わず、ここまで来たら20勝でMVPを狙ってみろよ。期待してるよ。
写真=BBM