高校でのつらい時期を乗り越えて

ドラフト候補として注目を集める富山・湯浅。伸びしろ十分な19歳である
後期優勝を決めた富山で今秋のドラフト候補としてNPBスカウトの間で評価が急上昇しているのが高卒新人右腕・
湯浅京己(聖光学院高)である。
183センチの身長以上に大きく見えるフォームから力のある直球を投げ下ろす。スライダー、カーブ、チェンジアップなどの変化球の精度も徐々に上がってきた。
「伊藤(智仁)監督から付きっ切りでフォームの指導を受け、乾(真大・元
巨人)さんから助言をもらっている。そのおかげで成長できている」
三重県の出身で、高校は福島・聖光学院高に進学したが、入学後から腰の成長痛を発症し、2年冬まで投球ができなかった。
「ケガの間はずっと記録員やマネジャーなどの裏方をしていた。選手に戻りたいという気持ちを持っていたが、毎日がつらくて、野球をやめて三重に帰ろうと何度も思った。でも『ここでやめたら人生が終わる』と思って耐えた」
苦しい時期を乗り越えたことが「今につながっている。聖光学院で野球をできたことがよかった」と振り返る。3年春にようやく公式戦で登板できるようになり、球速も140キロ台が出るようになった。ただ夏の甲子園メンバーからは外れた。
「高校野球は1年もできなかったので不完全燃焼だった。大学進学も勧められたが、野球に集中してできる環境を、と思い、BCLに挑戦を決めた」
昨年11月のBCLトライアウトでその素質を高く評価され、ドラフト1位で富山に入団。今季は先発ローテーション投手として経験を重ねている。
「高校時代は頭を振って投げていたため、よく帽子が落ちていた。今はシャドウピッチングでマウンドの傾斜を逆に使って投げるなどの工夫をして、頭から突っ込まないようにフォームを変えたため、帽子が落ちなくなった」
5月には自己最速となる147キロをマーク。NPBスカウトが今秋のドラフト候補として注目する存在となっている。8月25日の信濃戦では先発し、7回を投げ被安打6、1失点と好投。3勝目を挙げた。
「ずっと先発させてもらっているが、まだ勝ち星が少ない。残りの一日一日をムダにせず、チームに貢献できる投球をしたい」
高卒1年目。その潜在能力は計り知れない。プレーオフでの投球にも注目が集まる。
文=岡田浩人