振る力が足りない日本
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2年連続高校日本代表でプレーした大阪桐蔭高・藤原の口から、木製バットへの対応力の難しさが「課題」として出た
第12回BFA U18アジア選手権(宮崎)に出場している高校日本代表チームは9月7日、チャイニーズ・タイペイとのスー
パーラウンドで惜敗(1対3)し、決勝進出を逃した。日本は前回(2016年、台湾)大会を制しており、史上初の連覇の可能性が消滅した。
韓国との一次ラウンド(5日)も1対3。アジアのライバル2チームから2点しか奪えなかった。その内訳を見ると、さらに厳しい。韓国戦は相手の敵失(けん制悪送球)による1点に抑え込まれた。チャイニーズ・タイペイ戦はバント安打と、相手左翼手と中堅手が譲り合ったミスによる二塁打の2安打だけ。1得点は犠飛で、タイムリーはなかった。
敗因は明らかである。2年生ながら昨年のU-18W杯(カナダ)にも出場し、2年連続での高校日本代表入りとなった大阪桐蔭高・
藤原恭大。開幕から3試合は四番を務め、韓国戦では右越え三塁打を含む2安打も、一番に入ったチャイニーズ・タイペイとのスーパーラウンドでは4打数無安打。当事者の言葉が、最も説得力がある
「(3位だった)昨年もそうですが、ピッチャーは頑張ってくれていますが、打つ力がない。韓国、チャイニーズ・タイペイも振ってくるチーム。それに対して、自分たちは当てにいく打撃をしていた。相手は一つも二つも上でした。まだまだ、振る力が足りない」
スイング力が不足している要因は何か。毎年、高校日本代表チームが結成されるたびに指摘されるのが「木製バットへの対応力」。藤原は8月21日に金足農高(秋田)との甲子園決勝を戦い、春夏連覇を達成した。金属バットでの激闘を終えた翌22日には枚方ボーイズ時代のチームメートである報徳学園高・
小園海斗を誘って、バッティングセンターへ。木製バットに持ち替え、必死に調整したという。
25日に集合。強化試合4戦、チーム結成から1週間足らずで大会に入ったが、この短期間で木製バットに順応していくにはやはり、限界がある。昨年、「高校史上最強打線」と言われた早実・
清宮幸太郎(現
日本ハム)、履正社高・
安田尚憲(現
ロッテ)、広陵高・
中村奨成(現
広島)でさえも、かなり苦しんでいた。金属バットの弊害なのか、成果を収めるには、それなりの時間が必要なのである。一般的に金属バットは反発力を利用できるが、木製バットは芯に当たらないと飛ばない。つまり、本物の打撃技術が要求されるのである。
迫られる本腰を入れた対応策
藤原とともに、昨年も日の丸を背負った小園は韓国、チャイニーズ・タイペイとの「差」について問われると、こう言った。
「言い訳はしたくないですが、(日本の)高校野球は金属バット。(韓国は高校時代を木製で過ごしており)木製バットの差があるのかなと思います」
高校日本代表を率いる永田裕治監督は「一生懸命やっている」と、選手たちを責めることはなく「こちらが管理できなかった」と反省を口に。U-18世代が国際大会で敗退するたびに「使用バット問題」が取り沙汰される。
しかし「甲子園が頂点」の現状では難しい面もある。学校の方針で、木製バットを使わない学校もあり、全国で部員が約15万3000人という裾野で、木製バットの原資の問題もある。一方で高校卒業後、大学、社会人、プロで野球を続ける選手は、金属バットとは縁がなくなる。ただ、国際舞台で結果を追求するならば、本腰を入れた対応策に迫られているのは明らかである。
悔しいのは選手たち。全力プレーを貫いた球児に罪はない。同じ過ちだけは、繰り返してほしくない。
文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎