
10月6日のファーム選手権で6回バックスクリーンへ2ランを放った江越(中央)。来季は一軍でこの笑顔をたくさん見たい
阪神の10月は、激震の連続だった。17年ぶりの最下位。本拠地・甲子園で球団ワーストの39敗。そして、
金本知憲監督の電撃辞任。ただその中で、光となる部分は12年ぶりのファーム日本一だった。
この試合で勝利した後の
矢野燿大二軍監督のインタビューは、球場にいたファンの心に響いたものだった。「今日の試合で選手たちの可能性を見てもらえたと思います。一軍は苦しい戦いが続いています。若い選手も苦しんでいます。この若い選手たちを信じてもらって、ファンと一緒に強い阪神を作っていきましょう」
今季の阪神の二軍は「超積極野球」を掲げて試合に臨んでいた。その結果がウエスタン・リーグ8年ぶりの優勝だった。若手が失敗を恐れないプレーをし続け、中堅クラスの選手がチームを盛り上げた。「二軍に入るためにプロに入ったのではない」という矢野二軍監督の話も選手たちに響いた。
また、試合で失敗したときなどは、その日にすぐに反省をして練習に取り組み、同じ失敗をしないように取り組んでいった。そういう日々の繰り返しと、勝利によって選手たちが勝つ喜びを一層、強くしていったのだろう。
一軍は最下位で、二軍はリーグ優勝といういびつな形のシーズンとなったが、裏を返せば、新しい指揮官の下で、高いレベルでの若手の競争意識がチームを強くさせる可能性もある。今季一軍で苦しんだ若手は、最下位の悔しさと監督辞任の責任を胸に、もうひと踏ん張りするだろう。二軍で躍動した若手は、日本一の経験を基に、さらなるレベルアップを図るはず。
金本政権により、われわれは多くの若手のプレースタイルを一軍で見ることができ、さらにもがき苦しむ姿も見てきた。矢野二軍監督のように、そういう彼らの成長を見守りながら、可能性を信じ、来季以降、今一度彼らの躍動を楽しみにしたいと思う。
文=椎屋博幸 写真=早浪章弘