
ア・リーグ新人王に輝いた大谷翔平。2019年は打者への専念となるが、投手心理を生かした二刀流打法で、今年以上の成績を挙げてくれるはずだ
打者に専念する2019年はどれくらいの飛躍をするのだろう。ファンも楽しみにしているはずだが、エンゼルスの大谷翔平本人も楽しみにしている。
「(右ヒジを)手術したことで、もっといい状態になって打席に入れると思っています」と週刊ベースボールでのインタビューに答えてくれた大谷。今季9月、右ヒジじん帯に新しい損傷個所が見つかったが、その後の打撃での活躍は目覚ましく9月の打撃成績は24試合出場で27安打7本塁打18打点、打率.310で、右ヒジに違和感なく打撃をしていたという。
「医学的な理論上では、右投左打に関して右ヒジのじん帯には負担はほぼないです」という見解を語り、来季に向けて不安なくリハビリを続けている。インタビュー中、何度も「楽しい」と語っていたが、それはより高いレベルでプレーできる環境がメジャーに整っているからだ。この豊富なデータを生かすことのできる選手たちがいることで、対戦するたびに新しい攻略法が出てきて、これを超える対策を立てる必要性があることが、苦しいながらも楽しいのだという。
その中で大谷は投手心理を生かした打撃でも、ライバル投手たちに立ち向かう。今季の開幕戦、第一打席の初安打の場面を詳しく解説してくれたコメントでもそれが分かる。
「僕は八番打者でした。しかもオープン戦1割台の打者なのでアスレチックスからしたら簡単にアウトにできる打者、というのはあったと思います。開幕投手でエースだから下位打線に四球を出すのもイヤだと思うんです。初球から厳しいコースも、変化球もないはず。その考えで初球に甘い球がくるだろうと」と初球を思い切りスイングしメジャー初安打を放った。「一応、僕もピッチャーをしていますから、同じ場面ならそう投げます」と笑ったが、これこそが二刀流を生かした大谷の打撃の神髄でもあるだろう。
「野球は投手が投げて始まるスポーツです。それを迎え撃つ打者は、投手のことを知らないと対応できないです」と話す大谷は「今年1年、メジャーの多くの投手と対戦できたことは来季に向けて大きなアドバンテージ」と自信を持っている。
来季は打者としてのみの復帰だが、その打席に中にはあらゆるデータを生かしながら、さらに「投手心理」という経験をうまくミックスした打撃がある。この「二刀流打法」が来季、われわれに今季以上のインパクトをどれほど与えてくれるだろうか。期待したいところだ。
文=椎屋博幸 写真=Getty Images