狙うは先発ローテ入り

ストレート以外に多彩な変化球も魅力の一つ。第2クール以降、試す機会がありそうだ
2月5日、第1クール最終日にしてようやくドラフト1位右腕、
上茶谷大河のブルペンを見ることができた。捕手の
戸柱恭孝を相手にストレートのみ60球を投げ込んだ。翌日は休養日ということもあり、
三嶋一輝、
大貫晋一、
阪口皓亮らも力を入れて腕を振っていたが、上茶谷が投げるボールの軌道は横に並ぶ投手たちとは異なっていた。
印象としては“低めに伸びる”イメージ。投げ下ろすというより、沈み込んだフォームから繰り出されたボールが、地面すれすれを這ってミットに吸い込まれる感じだ。このストレートを見て、合同自主トレ前に彼が話してくれた言葉があらためて理解できた。
「意識するのはボールを前でリリースすること。ステップした左足のつま先よりも少し手前で放るイメージを持つとスピン量が増えて、下から上に浮いていくような感覚が持てます」
この日の投球について、本人は「低めにいった球がそれほど多くなかった。あまりよくなかったです」と振り返ったが、ボールにはキレも感じられ、特にブルペン投げる存在感が抜群だった。実際にネット裏で見ていた他球団のスカウト、OBの口からは「これはいいね」と言葉が漏れていたのは、ちょうど1年前の
東克樹の姿を思い起こさせる。
キャンプは休養日を挟み、第2クールに突入。「思った以上に疲れがある」と第1クールを終えて、正直な感想を語った上茶谷。それでも「シーズン中は疲労している中でも投げなければなりません。投げ込みも必要になる」と貪欲な姿勢で、先発ローテの一枠をつかみにいく。
文=滝川和臣 写真=大賀章好