
イスに座ることなく、一方的にまくし立てて去っていったコリンズ監督
プロ野球の歴史の中から、日付にこだわってその日に何があったのか紹介していく。今回は2008年5月21日だ。
「プロ野球の監督を務めるには、体の中から燃え出てくるようなエネルギッシュなものがないといけない。炎のように、燃えるものが必要だ。私の中で、その火が消えてしまった。今がタイミングだと思う」
余りにも電撃的な辞任表明だった。この日、スカイマークスタジアムで行われた
阪神戦後、緊急の記者会見が開かれた。机とイスを並べ、急造の会見場となった選手食堂に、
オリックスのコリンズ監督はこわばった表情で現れた。
「質問は受け付けない」
そう前置きすると、大きな声で一方的に話し始めた。
「日本で変わったことをやろうと思い、そのために必要なことに取り組もうと思った。大きなチャレンジだったし、失敗したとは思っていない。期待された成績は残せなかったが、野球の監督というのは情熱がなくなった人間がやるものではない」
時間にして約15分。用意されたイスには座らず、立ったまま自らの胸の内を一気に吐き出すと、逃げるようにして会見場を後にした。最後の去り際でも自分の主張を一方的に話すだけに終わったのは、今回の辞任劇に至るまでの経緯を象徴していた。
中村勝広球団本部長が本人に代わって説明した。
「初めて辞任の意向を聞いたのは、19日の夜。本人によると、2、3週間前から悩んでいたとのことだった。球団としても慰留に努めたが、本人の意志が固かったため断念せざるを得なかった」
チームは20日にようやく最下位を脱出したばかりだった。状態も上向き、巻き返しはこれから――。そんな雰囲気に水を差すかのように、コリンズ監督はユニフォームを脱いだ。
写真=BBM