炭谷のリードはどこがすごいか?

交流戦で輝きを増す炭谷
交流戦が始まり、
巨人の捕手・
炭谷銀仁朗の評価が上がっている。
西武出身。相手が慣れたパ・リーグというアドバンテージはあるが、確かに見ていて、さすがと思うときは多い。
特に若手投手と組んだときがいい。6月13日の西武戦(メットライフ)で、
桜井俊貴が先発で勝利投手になった試合はその典型。まさに投手の良さを“引き出す”リードだった。
小林誠司のリードが悪いわけではない。ここ1、2年の彼は、データをうまく利用し、自分のリードができ始めていると思う。失敗がないリードになってきた、と言えばいいのか。他チームのスタメン捕手と比べても、そん色ない。
ただ、今回、比較対象として炭谷が出てきた。比べると、まだ深みがない。
原辰徳監督も言っていたが、現時点では、間違いなく、炭谷が「一枚上」だ。
深みって何? と言われると、言葉では説明しづらいが、それは引き出しの多さであり、結局、包容力というか、母性のようなものにつながる気がする。
炭谷は移籍もあったし、いろいろな経験をし、それがリードに表れている選手だ。キャッチャーは、そのときの表情や、指の動き、つまりはリードで醸し出す雰囲気が違ってくる。炭谷の場合、緊張感の中にも「ああ、まかせていいんだ」と投手に思わせる、ぬくもりがある。
炭谷には、入り球から勝負球までの組み立てもそうだし、1試合の中でも説得力のあるストーリーがある。もちろん、途中、投手の調子によって変えてはいくが、変えたときも投手に不安を感じさせない。
まずは成功体験。「こういう場面で、こういう球を投げたら抑えられるんだ」という驚きを投手が感じ、その繰り返しが信頼関係になる。加えれば、投げたがっている球とか、そのときの投手、打者の心境を観察する力があるからだろう。返球も丁寧だし、投手を気持ちよくさせてくれる。だから投手が首を振る確率も低いはずだ。
ただ、ほめた後でなんだが、いま炭谷で結果が出ているのは、もう一つの要素がある。
捕手の使い分けだ。同じ捕手でずっとシーズンを戦っていくと、どうしてもリードに傾向が出て、相手チームに読まれる。
これはもう化かしあいのようなものだが、昔からタイプの違う捕手を使うことで目先が変わり、投手の違った一面が引き出され、チーム自体も生まれ変わったことはよくある。
一つ誠司をフォローしておこう。彼はバッティング、肩では間違いなく炭谷に勝っている。焦らず、自分のリードを磨いてほしい。お前の力が必要なときが必ず来るから。
13日の試合では、炭谷のリードもあって、桜井が強打の西武相手に7回を抑えた。季節は終わったが、桜のつぼみがやっと咲き始めたかな。そういえば、この日の最後は、18年のドラフト1位、
鍬原拓也。まだ、本領発揮とはいかないが、彼もまた、リリーフで少しずつ実績を積んでいる。
2人の共通点はドライチで入ってからなかなか結果を出せなかったことだ。期待されて入り、ちやほやされながら、天国と地獄みたいに一気に評価が下がった経験をした。
今は、この2人だけじゃなく、生え抜きの投手がリリーフでチャンスをもらい、少しずつだけど結果を出し始めている。
一番喜んでいるのは、もちろん、本人、そして家族だと思うが、それ以上にほっとしているのが、巨人のスカウトじゃないかな。ドラフト1位が結果を出せないとなると、スカウトも死活問題だからね。
炭谷はGスカウトの救世主とも言えそうだ。