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FOR REAL - in progress -

A.ラミレス監督 特別インタビュー/FOR REAL - in progress -

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優勝を目指して戦う横浜DeNAベイスターズ。その裏側では何が起こっているのか。“in progress”=“現在進行形”の名の通り、チームの真実の姿をリアルタイムで描く、もう一つの「FOR REAL」。


 39勝41敗2分、セ・リーグ2位タイで前半戦82試合を戦い終えた。
 4月には4年ぶりとなる10連敗を喫するなど、負け越しは最大で11にまで膨らんだが、勝率5割のライン目前まで持ち直してきた。

 就任4年目のA.ラミレス監督はここまでをどう総括するのか。そして、この先にどんな展望を描くのか。
 9.5ゲーム差の首位ジャイアンツを追う後半戦の戦略とキーマンを、指揮官が明かす。

――依然として2つ負け越している状況ながら2位タイで後半戦に入ります。まずは前半戦の戦いをどのように評価しますか。

「10連敗があったし、ロードで勝てないことも多かったが、Aクラスまで巻き返せたことに関しては、選手たちががんばってくれた結果だと考えている。当初は噛み合わなかった投打が、噛み合うようになってきた。もちろん簡単な道のりではなかったが、みんな決してあきらめることなく、常に前だけを向いて戦ってきたからこそ、ここまで来ることができた。
 交流戦の勝率が5割を超えるのは、セ・リーグでは2チーム前後だろうと予想していた。その中の1チームになることができればオールスターまでにはAクラス入りに近づけるという話をしたが、実際、そのとおりになった」

――4月29日の東京ドーム。ジャイアンツ戦の勝利で10連敗をストップさせた時、監督の目に涙が浮かんでいるようにも見えました。

「そうだったかもしれない。10連敗は長い。どんな監督であれ、相当のストレスを抱え込むことになる。あの試合が終わった時、心の中は勝ったうれしさでいっぱいだったが、同時に、溜め込んできたストレスが湧き上がってきて、それが一粒か二粒の涙になって溢れたかもしれない。
 監督という職業のストレスレベルは、外の人にはなかなか理解してもらえないと思う。チームを信じ、『こんなものではない』『もっとできるはずだ』と考えて、常に勝利を目指している。しかし、連敗が長く続くと、『これをやってもうまくいかない』『あれをやってもうまくいかない』という思いに囚われる。ポジティブな姿勢を貫こうとはしつつも、やはり人間なので、メンタルにひびが入ることはどうしてもある」


――前半戦、プランどおりの戦いができたわけではないと思います。“誤算”があるとすれば、どのあたりでしょうか。

「得点圏打率の低さだ。特に筒香嘉智J.ロペス、N.ソト宮崎敏郎、4選手の得点圏打率が低調だった。うちの打線は彼らに頼っている部分が非常に大きく、打点を稼いでもらわなければならないが、前半戦はチャンスの場面で得点できないことが多かった。スモールベースボールをするにせよ、攻撃的な野球をするにせよ、彼ら4人が機能しないことには得点に結びつかない。そこがいちばん苦しかったところだ。
 大和の数字を見ると、得点圏打率は3割を超えている。正直なところ、そこまでは予想していなかった。これはチームにとって大きなプラス要素だ。伊藤光にしても、8本塁打、25打点、28四球と、いいシーズンを送っている。神里和毅もそうだ。このところ調子を落としているが、いい数字を残してくれている。
 ただ、神里は1番打者でありながら得点が43しかない。この数字こそ、後を打つ打者が得点圏でいかに打てていないかを象徴していると思う」

――BIG4の中でも筒香選手の状態は気がかりです。6月以降、調子を落としているようですが、監督は彼と話をする機会を持ちましたか。

「バッティングに関してあらためて話をするようなことはしていない。選手は、スランプに陥った時に周りからあれこれ言われることを嫌がるものだからね。球場によってよい結果が出たり出なかったりという傾向がある。ほかの人にどうこう言われたところで混乱してしまうだけだし、この球場で、このピッチャーはどういう攻め方をしてくるのか、という部分は自分の力で解決してもらわなければならない。もちろん、彼自身も努力を怠っていないし、ベストを尽くす姿勢は普段と何ら変わりない。
 数字で見ると、82試合を終えた段階で91三振、四球は55、出塁率は4割以上ある。監督として、チームの勝利のために何がベストなのかと考えた時、彼の特性がより生きる打順に変える必要性があると感じている」

――4番以外の打順に据える可能性もある、と。

「後半戦の開幕は、2番でいくかもしれない。得点圏で打順が回ってくる確率が低くなるし、何より出塁率の高さを生かすことができる。四球を選ぶなどして塁に出れば、その後のバッターが打つことで得点につながる可能性が高くなるはずだ。彼自身にかかるプレッシャーも、4番を打つことに比べれば少なくなるだろう」

――最終的な判断はいつ下すのですか。

「試合当日(7月15日)の朝だ。数字を根拠とした判断では、2番でいくべきだという答えはすでに出ている。あとは勘、フィーリングの要素を加味して決めたい。朝、目を覚ました時に迷いがあれば、4番のままかもしれない。
 筒香を2番で起用することに対して多くの人が驚くかもしれないが、私は監督として『どんな決断をしても後悔しない』ことをポリシーとしている。どんな決断であれ、勝つためにベストだと思ってのこと。後悔することはない」


――投手陣について伺います。継投の考え方は、昨シーズンまでと今年とで、何か変化はありますか。

「かなり違いが出てきていると思う。今シーズンは、一軍にいるリリーフ投手はすべて、どんな状況でも投げてもらえるピッチャーでなければならないという考え方をしている。このピッチャーはビハインドで起用するピッチャー、ロングリリーフ用のピッチャーということではなくてね。どのピッチャーにも状況を問わず任せられる、そういう投手陣を築き上げることが非常に重要だ。
 たとえば、先発が早い回で崩れてしまった時、ビハインドで投げるという役割を与えられたピッチャーでは、マウンドに行ったとしても相手の勢いをなかなか止めることはできない。その彼が失点を重ねてしまうと、勢いをこちらに取り戻せないまま試合が終わってしまう。でも全員が勝ちパターンで使えるピッチャーであれば、相手の勢いを止めることができる。
 三嶋一輝がいい例だと思う。勝ちパターンで投げることもあれば、先発が降りた後の4回、5回の2イニングを投げてもらうこともあるし、6回や7回に行ってもらうことある。現状、7~9回を任せているE.エスコバー、S.パットン山崎康晃以外のピッチャーには、どの状況でも行ってもらえるという形にしていきたい」

――中継ぎに回っていた石田健大投手が先発に向けての調整に入っています。これはブルペンの陣容が整ってきたことの表れという面もあるのでしょうか。

「というより、石田の先発復帰はプランに沿って進んでいる話だ。もともと、今シーズンはまずはリリーフで起用して、状態がよくなれば先発で投げてもらうプランだった。リリーフとして投げてもらうほうがいいのかなと思ってはいるが、まずはプランどおりに進めている。先発で結果がよければローテーションに残れるだろうし、またリリーフでという選択肢もある。
 以前のように6回、7回を投げきろうとしてペース配分をするのではなく、リリーフの時と同じようなメンタリティで、初回から飛ばす攻めのピッチングをしてほしい。とにかく5回まで投げて、あとはスタミナ次第で6回、7回と投げられればいい。高いポテンシャルがあるので、やってくれるのではないかと期待している」


――首位のジャイアンツとは9.5ゲーム差あります。この差をどうやって埋めていく考えでしょうか。

「第一に、他チームがジャイアンツとどう戦うのかということについて、我々にはどうすることもできない。我々がジャイアンツとどう戦い、どのようにいい結果を出すのかに集中すべきだ。
 今シーズンの対戦を振り返ると、我々が負けたというよりも、向こうに勝ちを与えてしまうかのような試合もあった。これから�⊆茲襪戮Ⅶ邱腓呂靴辰�蠑,辰董∈把磴任�2勝1敗でカード勝ち越しを重ねていかなければならない。3試合ともエース級の先発投手に当たることもあれば、反対に、3試合ともエース級ではない先発投手に当たることもある。後者のケースでは特に、3連勝できるようにしたい。
 うちの打線は、ジャイアンツのリリーフ陣はかなり打ち崩しているが、先発に抑え込まれている。先発投手をどう攻略するかがこれからのカギになってくるだろう」

――後半戦のキーマンを挙げていただけますか。

「ジャイアンツとは9.5ゲーム差があるんだ。キープレーヤー1人だけががんばってもその差を追いつくことはできないから、やはりチーム一丸となってジャイアンツに近づいていきたいと考えている。
 あえて名前を挙げるなら、やはり筒香。現状でも、打率3割、ホームラン30本か35本、100打点というところに手が届くペースだとは思うが、もう一段階ステップアップしてもらい、得点圏で打って、チームを引っ張ってもらえたらと思う。
 ピッチャーに関しては、引き続き今永昇太がキープレーヤーになってくるが、後半戦、さらに上を目指すためには、東克樹の復活がどうしても必要だと感じている。特にジャイアンツは東に対して苦手意識を持っている。首位追撃には、東の存在がカギになってくるだろう」



『FOR REAL - in progress -』バックナンバー
https://www.baystars.co.jp/column/forreal/

写真=横浜DeNAベイスターズ

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