
7月9日、オリックス戦(楽天生命パーク)で今季初登板初先発し、勝利を挙げた楽天のエース・則本
エースの開幕戦はシーズン開幕から3カ月以上経った7月9日となった。それでも楽天・
則本昂大のエースとしての立ち居振る舞い、存在感、投球は健在だった。
楽天生命パークでのオリックス戦。エースの復帰戦に負けられない思いは強かった。チームとしては12試合ぶりの先制点を放った
嶋基宏は「打たないと怒られるので」と冗談めかしてその一打を振り返ったが、「今日は負けられないからね。1本打つことができてよかったよ」と3ランで大量援護した
ブラッシュがチームの思いを代弁。早々にリードを得た則本は6回無失点、90球でマウンドを降り、今季初勝利を手にした。
則本が一軍のグラウンドに顔を出したのは今季初登板より約1カ月前となる6月12日。
石井一久GMは「緊張感がある中で練習したいと本人から申し出があった。みんなから見られる中でやることで違う力みも出てくるし、それもリハビリのひとつ」と一軍の雰囲気に慣れさせるため、一軍で調整を進めさせていた。ルーキーイヤーから一軍で投げ続けている則本にとって、一軍と二軍の違いは精神面で特に大きかったようだ。気持ち的な緊張感。則本の復帰には、技術や体だけではない慎重な調整があったのだ。
3月11日に受けた手術から順調にリハビリを続け、チームの最大のピンチに戻ってきたエース。楽天生命パークに駆けつけたファンの中には、目に涙を浮かべその復活を喜ぶ姿もあった。負の連鎖から抜け出すことができず10連敗。貯金をすべて吐き出したが、
平石洋介監督は「(開幕時は)ノリが帰ってくるまでなんとか5割と思っていた。それを考えれば悪い数字ではない。すべてをマイナスにとらえる必要はない」と前を向いた。
「お待たせしました! 今日は僕が(連敗を)止めてやるという気持ちでマウンドに上がりました」とお立ち台で笑顔を見せた則本。「やはり自分のいる場所はここだなと思いました」。優勝争いに向けた本当の勝負はここから。帰ってきたエースがチームを力強くけん引する。
文=阿部ちはる 写真=井沢雄一郎