外崎が千賀対策を確実に実行して2ラン

8月30日、ソフトバンクとの首位攻防第1戦の4回、千賀から同点2ランを放った外崎を迎え入れるベンチ。打線の破壊力はすさまじいばかりだ
メットライフドームを首位攻防の熱気が包んだ8月30日、2ゲーム差で追うソフトバンクとの3連戦の初戦は
西武にとって嫌な形で幕を開けた。先発の
今井達也が制球に苦しみ、2、3回に1点ずつ失った。
対してソフトバンクの先発を任されたエース・
千賀滉大は150キロ台のストレートと140キロ台中盤のカットボールを中心に、走者を出しながらも西武打線を力で抑えていく。
それでも、
外崎修汰は嫌な流れとは感じていなかった。
「失点が4、5点となってくると難しくなってくるんですけど、2点だったら、そこまでですね」
先行されても、それ以上に打って勝ってきた“山賊”たちは今回の首位攻防戦でも同じように襲いかかる。2点を追う4回一死一塁で外崎が放った同点2ランには、西武打線の真骨頂が見えた。ミーティングで伝えられた千賀対策を外崎が明かす。
「高めの真っすぐはすごく勢いがあるので前に飛ばない。目線を下げて、逆に低めだったらフォークに空振りでもいいという話でした」
1ボール1ストライクから内角低めに投じられた152キロの速球がギリギリ外れる。続く4球目、再び内角低めへの153キロ速球がコース、高さともにやや甘くなると、外崎はレフトスタンドにたたき込んだ。
「あれより高かったら手を出してはダメ。逆に、あそこから下は全部打ちにいくイメージでした」
2対2の同点で迎えた7回裏、球数が110球を超えた千賀に対し
森友哉が勝ち越し2ラン。球威が落ちてきたとはいえ外角高めの151キロ速球という難しい球で、
辻発彦監督が「天才」と称えたほどだった。
2本の本塁打で初戦を取ると、続く2戦目は初回に森、
山川穂高の2ランなどで5点を先行。山賊打線の勢いは止まらず、10対5と打ち勝ちソフトバンクとゲーム差なしとした。
秋山、山川の状態が急上昇したことがプラス
3戦目は相手投手陣に抑えられて1対4で落としたが、2勝1敗で勝ち越しゲーム差1。結果以上に大きかったのは、その試合内容だ。
打線ではなかなか調子に乗れない山川と
秋山翔吾に光明が見えた。2戦目に2本塁打を含む猛打賞の山川が、7回に
高橋純平が外角高めに投じた151キロ速球をレフトスタンドに運んだ今季40号以上に喜んだのが、3回のライト前安打だった。
「今はスイングより、構えと、足を上げてボールをどうつかまえるかを意識しています。それで結果が出たのはいいこと。あまりムダなことを考えず、つなぐときはつなぎたい。ホームランよりライト前ヒットのほうが価値があった気がします。あの後、木村(文紀)さんが犠牲フライを打って1点入っていますからね」
5対0とリードを広げた直後の2回、8月中旬から状態が悪いという秋山にも一発が出た。2ストライクに追い込まれてから外角への140キロ速球をレフトスタンドに突き刺し、「こういう試合で乗り遅れると明日の1打席目でフラットな気持ちで入れない部分もある」と笑顔を見せ、3戦目は猛打賞を記録した。
投手陣では中継ぎで売り出し中の高卒2年目、
平良海馬が最速158キロの豪腕で流れを引き寄せた。初戦は2対4で迎えた7回二死二、三塁のピンチで登板すると、三番・
内川聖一に内角へ150キロ超の速球を2球続けて力でねじ伏せた。
「マウンドに上がったら抑えるイメージをして、思い切ってどんどん強気で攻めていきました」
2戦目は7対4と試合が膠着した6回に登板し、力強い球で三者凡退に抑えた。そして初戦から2戦続けて勝ちパターンの両右腕、
平井克典、
増田達至で逃げ切り。増田は「野手の皆さんが打ってくれているので、どうにか最後に応えないといけない。平井や僕がしっかり抑えて、いい流れで締められればいい」と話していたとおりの投球を見せた。
先発投手には不安を残すが、打撃陣が引っ張り、中継ぎも形が出来つつある。残り20試合を切る中、前年王者・西武が状態を上げてきた。
文=中島大輔 写真=桜井ひとし