ヤクルトのドラフト3位・杉山は面白い

新人合同自主トレの視察にきた高津監督。いろいろ考えていると思うよ
いきなり“食”の話だが、「いきなり!ステーキ」に最初行ったとき、「こんなうまい肉が、こんな安く食えるのか」と感動した記憶がある。
最近は値上げと同エリアの店が増え過ぎたため、経営が苦しくなったようだね。うちのヨメさんは「味が落ちたみたい」とも言っていたが、こっちの舌が慣れてきたのかもしれない。最初の驚きは、必ず薄れていくから。
野球の世界も似たところがある。特に投手には、いきなりの初物の強みは間違いなくある(やや、強引な導入でした)。
1987年、
中日・
近藤真一の初先発でのノーヒットノーランもあったが、投手陣が初登板で、いきなり好投するという例は珍しくない。
打者の情報不足もあって、初顔合わせの投手、特に左腕の場合、いくら打ちにくいのは間違いない。
データや映像があっても打席で対峙した印象は、また違う。荒れ球だったら、と思うと踏み込みも躊躇するだろうしね。
ただ、それが続くかどうかはまた別。
相手に研究されたり、監督、コーチ、OBにあれこれ言われ過ぎたり、ピッチングの怖さを知ることで、全体にフォームが小さくなり、結果が出せなくなるケースのほうがはるかに多い。
ただ、今は昔に比べれば、そういう初顔の“いきなりサプライズ”自体が減っている。
プロでは、トラックマンなどの専門的な解析がかなり進んでいるし、一般のファンもスマホを使えばプロ入り前の選手の映像を簡単に見ることができる時代になった。
そう言っている俺も、解説者活動の下調べも兼ね、最近、暇さえあれば、スマホで新人たちの動画を見ているが、結構、あきない。
その中で気になったのが、
ヤクルトの3位、創価大の
杉山晃基だ。柔らかく、いいフォームをしている。150キロ以上も出るみたいだし、即戦力と言っていいんじゃないかな。
それこそ、俺は「いきなり先発」でもいいかなと思った。
球は多少、高めに浮き気味だったが、変に低めに制球してフォームが小さくなるより、思い切りの良さは残したほうがいい。フォークがあるようだから、高めの球は逆に絶対に必要だしね。低めに集めて通用するのはアマチュアまで。プロのバッターの技術はとんでもなく上がっているから低めばかりでは通用しない。
高めに目付させるのもそうだし、フォーク系も真っすぐと同じ軌道から落ちていかないと、プロの打者には見極められてしまう。
ほかのヤクルトの選手も見てみた。1位の
奥川恭伸は何度も見ていたから、その下。そしたら2位の日体大・
吉田大喜、4位の大商大・
大西広樹と、このチームの大学3人はなかなかいい。
吉田は少し変則フォームで、ブルペンの映像を見たら動きが止まっている箇所があって気になったが、試合ではそれほど気にならなかった。これは「いきなりクローザー」でもいいかな。
大西は150キロこそ出ないがフォームにリズム感があって、変化球の使い方にセンスがある。使い減りしない投手に見えるし、「いきなり中継ぎ」でいい。
ヤクルトの投手陣は、ここ何年か外国人頼みの傾向があったが、この3人くらいの力があるなら、どんどん即戦力と使ってもいいと思った。外国人選手って、正直言えば、使ってみなきゃ分からないし、長期間いるわけじゃないしね。
加えれば、昨年の
ソフトバンク・
甲斐野央もそうだが、最近の大卒選手は技術的にもレベルが高い。育成なんて遠回りするより、いきなり実戦で使っていったほうがいいと思う。
高津臣吾監督がどう考えているかは取材していないが、吉田と杉山を逆にしてもいいけど、いきなり先発・杉山、中継ぎ・大西、抑え・吉田とか、“いきなり新人リレー”も面白いと思う。
今年は前半飛ばすだけ飛ばしても“オリンピックブレーク”が3週間ある。各チームの監督がどんな投手起用をするかも楽しみだね。
結構、冒険はできると思うよ。