新型コロナウイルス感染拡大防止のため慎重な姿勢を見せていた楽天だが、5月8日からは球団施設での自主練習を再開した。さらにこれまで一、二軍の施設で6つのグループに分けていた練習を、20日からは2つのグループに集約。楽天生命パーク宮城での練習には主力選手ら40人が参加した。6月中を目標とする開幕に向け練習強度を上げるためでもあるが、野球のある日常が徐々に戻りつつある。
少しずつ明るい話題が増えてきた野球界だが、20日には夏の甲子園の中止が発表された。甲子園は球児たちにとって夢の舞台だ。そこを目指して努力を続けてきた球児たちにとってはやり場のない思いに苦しんでいるだろう。さらにプロの舞台を目指している選手たちにとっては、アピールの場が一つなくなってしまったともいえる。プロで活躍している選手の中には、甲子園での活躍がスカウトの目に留まり、プロへの道が開けた選手もいるだけに、そのチャンスがなくなったことはプロ野球界にとっても大きな出来事と言えるだろう。
だが一方で甲子園に出場していない選手もまた、プロ野球界を支えていることは確かだ。出場できなかった悔しさをバネに、再び努力を重ね新たな道を切り開いた選手も多いのだ。
楽天ではエースの則本昂大、
岸孝之、
高梨雄平、今季からキャプテンを務める
茂木栄五郎や
銀次らも甲子園に出場していない。甲子園の出場こそなかったものの、それでもチームの顔であり球界を支える選手たちだ。銀次は高卒だが、則本、岸、茂木は大卒。また高梨のように社会人での努力がスカウトの目に留まった選手もいる。野球が好きで続けていればその先の道が開けることもあるはずだ。そして甲子園に向けて費やしてきた熱量はその先の野球人生はもちろん、たとえ別のフィールドに立つことになっても必ず役に立つだろう。
開幕に向けて動き出したプロ野球。甲子園に出場していない選手たちの活躍もまた、悲しみに暮れる球児たちを勇気づけることになるのではないだろうか。
文=阿部ちはる 写真=BBM