
上田西高・高寺望夢はプロ志望高校生合同練習会のシート打撃の計8打席で、6打数5安打を記録した
実際にはあり得ないが、バットにボールが吸い込まれていくようだった。
9月5、6日に41人が集まったプロ志望高校生合同練習会の東日本会場(東京ドーム)。ミートのうまさで一際目立ったのが、上田西高・高寺望夢(たかてら・のぞむ)だった。6日のシート打撃では、圧巻の打撃を見せている。
左前打、中前打、左越え二塁打、そして、たたきつけた捕手の前に高くバウンドした打球で、50メートル走6秒0の快足を飛ばしての内野安打。さらに、中前打を放ち、驚愕の6打数5安打である(計8打席で2四球、唯一の凡退は左邪飛)。
このシート打撃は通常の実戦とは、シチュエーションが異なる。カウント1ボール1ストライクからのスタート。高寺は力を抜いて構え、コンパクトにバットを振り抜く。そのスイングに、迷いは見られなかった。対戦した6投手は初顔合わせ。データなしのぶっつけ本番は、明らかに打者が不利と言える。しかし、そんな悪条件もお構いなしに、安打を量産。規格外の対応力を披露したのだ。
「とても素晴らしいグラウンドで野球をすることができ、楽しかった。長打力と(初対戦の投手への)対応力をアピールするつもりで臨んだ。(6打数5安打でアピールできたのでは?という質問に対して、照れながら)アピールできたかは分かりませんが、力を出し切ることはできました。これからも練習を続けて自分を磨き続けたいと思います」
178センチ75キロとバランスの取れた、右投げ左打ち。高校通算31本塁打のパンチ力に、遠投110メートルの強肩と、野球センスの塊である。
NPBスカウト75人の前で、これ以上ないパフォーマンス。遊撃守備も軽快であり、高寺はこの2日間で、人生を変えたかもしれない。
文=岡本朋祐 写真=山口高明