
抜群の安定感で打者を封じる西武・平良
現在、球界No.1と評されている中継ぎ投手は西武の
平良海馬だ。160キロ近い速球と、キレのある変化球を武器に、2年目の昨季は33ホールドをマーク。今季はさらに安定感が増し、5月12日現在20試合で17ホールド、防御率はなんと0.00と驚異的なピッチングを見せている。こうなると「最優秀中継ぎ投手」のタイトルだけでなく、「シーズン無失点」も期待したくなるが、過去のタイトルホルダーで無失点に抑え切った選手はいるのだろうか?
防御率0点台はこれまでに3人いる

2011年には中継ぎとしては初のMVPに輝いた中日・浅尾
「最優秀中継ぎ投手」のタイトルは、1996年に制定された新しいタイトルだ。以前は名称や選考基準がセ・パで異なっていたが、2005年に両リーグともにHP(ホールドポイント)を選考対象にし、名称も「最優秀中継ぎ投手」に統一された。
今回は、選考基準が統一された2005年以降の受賞者を対象に、最優秀中継ぎ投手の防御率を調べてみた。防御率が優秀な順にTop10は以下のとおり。
1位
浅尾拓也(中日/2011年)防御率0.41
2位
藤川球児(
阪神/2006年)防御率0.68
3位
山口鉄也(
巨人/2012年)防御率0.84
4位
ファルケンボーグ(
ソフトバンク/2010年)防御率1.02
5位
マシソン(巨人/2013年)防御率1.03
6位
佐藤達也(
オリックス/2014年)防御率1.09
7位 山口鉄也(巨人/2013年)防御率1.22
8位 山口鉄也(巨人/2009年)防御率1.27
9位 藤川球児(阪神/2005年)防御率1.36
10位
菊地原毅(オリックス/2005年)防御率1.38
歴代最優秀中継ぎ投手の中で、最も得点を奪われなかったのが2011年の浅尾拓也だ。前年にNPB最高となる47ホールドを記録していた浅尾は、2011年もセットアッパーとして活躍。球団記録となる79試合とフル回転で登板したものの、失点はわずかに5。防御率0.41と驚異的な数字を残した。

阪神・藤川も2006年、防御率0点台で最優秀中継ぎのタイトルを獲得
浅尾に次ぐのが2006年の藤川球児で防御率は0.68。この年は前半を中継ぎ、後半は抑えを任されるというシーズンだったが、それでもリーグ最多の30ホールドを記録し、最優秀中継ぎのタイトルを受賞した。3位は2012年の巨人・山口鉄也だ。この年は投手陣の要となる選手が相次ぎ離脱する中、獅子奮迅の活躍で5年連続60試合登板を記録。安定したピッチングで防御率0.84を記録した。
わずかに0点台に届かなかったのが、2010年のファルケンボーグと2013年のマシソン、2014年の佐藤の3人だ。ファルケンボーグは安定感抜群の投球でソフトバンク中継ぎ陣を支えた存在。助っ人では初の最優秀中継ぎの受賞者でもある。ファルケンボーグの次にタイトルホルダーとなった助っ人がマシソン。2013年は8失点しか許さず、同僚の山口とともに最優秀中継ぎのタイトルを受賞することになった。オリックスの佐藤は、2013年にリーグ最多ホールドをマークすると、翌2014年も安定感のある投球で防御率1.09を記録。特にソフトバンクや
日本ハムといった、リーグ優勝を争ったチーム相手にはまったく打たれなかった。
7位、8位は再び山口がランクイン。これで最優秀中継ぎのタイトルを獲得した年すべてでTop10にランクインとなった。この高い安定感も、山口の強力な武器だったといえる。9位は2005年の藤川で、この年はリーグ最多の80試合に登板しながらも防御率は1点台前半だった。第10位は菊地原毅。
広島からオリックスに移籍してきた初年度だったが、打ち込まれるシーンは皆無という安定感のある投球を披露した。
これまでの最優秀中継ぎ投手で、0点台に抑えたのは浅尾拓也、藤川球児、山口鉄也の3人のみ。中継ぎは登板機会も多いため、失点する可能性は必然的に高まる。それでも防御率0点台に抑えるのは至難の業。そう考えると、西武の平良がいまだに無失点なのは驚異的といえる。ぜひとも平良には、球史に名を残す大投手3人も成し遂げることのできなかった「シーズン無失点の最優秀中継ぎ投手」を目指してもらいたい。
文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM