プレッシャーとは無縁の肝っ玉右腕

大阪ガスの高卒2年目右腕・河野佳は社会人日本選手権を4試合19イニング無失点で、大会連覇に貢献。MVPに輝いている
気の早いことは承知である。今夏、2022年のドラフト上位候補に浮上した右腕がいる。
大阪ガスの高卒2年目右腕・河野佳だ。広陵高時代は3年春のセンバツで150キロの大台を突破し一躍、注目を集めた。同夏は
広島大会準決勝敗退。「ドラフト候補」に浮上したものの、プロ志望届は提出せず昨年、社会人の強豪・大阪ガスへ入社した。
入社1年目の都市対抗1回戦(対Honda)で社会人二大大会デビュー(2回無失点)。2年目は中心投手として実績を重ねてきた。4月のJABA京都大会、鷺宮製作所との予選リーグでは8回無失点で8回
コールド勝利に貢献。5月のJABA北海道大会、日本製紙石巻との予選リーグでも先発し、7回1失点(チームは7回コールド勝利)で勝利投手となった。
史上3チーム目の大会連覇を狙った社会人日本選手権では、主戦の役割を担った。日本製鉄東海REXとの1回戦を散発5安打で完封すると、西部ガスとの2回戦では6回無失点で勝利投手。JR四国との準々決勝で登板はなく、Hondaとの準決勝では終盤2イニングを抑え、0対2で迎えた9回裏のサヨナラ勝ち(3対2)につなげた。三菱重工Eastとの決勝では2点リードの8回から2イニングを抑え、2大会連続2度目の優勝に貢献。計4試合で19イニング無失点(自責点0)と、最高殊勲選手賞に輝いた。相手に点を与えなかっただけでなく、3四死球と制球力が抜群であった。
防御率0.00の要因をこう分析した。
「相手よりも先に点を与えてはダメ。好リードしてくれた(捕手の)鳥飼さん(力斗、鳥取城北高)に感謝しています」
河野は2001年8月23日生まれの19歳。自身初という全国優勝に「初めてなので、うれしいです」と語り「これまでと同様に頑張って、都市対抗でも優勝できるようにしたい」と優勝直後の場内インタビューでは初々しいコメントが続いた。しかし、この談話だけに、だまされてはいけない。
「緊張? あまりしなかったです」
プレッシャーとは無縁の肝っ玉右腕。先発、救援で適性があり、NPBスカウトも「即戦力」の素材であることを確認したのは間違いない。高卒選手のドラフト解禁は入社3年。つまり、来年は野球人生を左右する「勝負の年」である。気は早いが、今後も22年のドラフト候補・河野の投球から目が離せない。
文=岡本朋祐 写真=佐藤真一