「相手が相手。気負い過ぎた」

佼成学園高の142キロ右腕・前野唯斗(3年)は早実との西東京大会3回戦(7月19日)で敗退。第4シードで迎えた夏だったが、初戦の入りの難しさを痛感した
相手のノーシード・早実は、2回戦を勝ち上がって迎えた、この夏の2試合目。一方、春の東京大会16強の第4シード・佼成学園高は3回戦が初戦(7月19日)だった。強豪校同士の好カードに、スリーボンドスタジアム八王子には
大勢の観衆が集まったが、思わぬ展開となった。
「何もしないうちに終わりました。ガップリ四つで投手戦の3点ゲームにしたいと思っていましたが……。先に(4回終了で)4点を取られると、当初のゲームプランを変えざるを得なかった」。最終的に0対6で敗退した佼成学園高・藤田直毅監督は無念を語った。誤算は142キロ右腕・前野唯斗(3年)の乱調だ。
「あんな前野は初めて……。最後まで安定しなかった」(藤田監督)。5回途中6失点の7四死球と、持ち味を発揮することができなかった。昨夏以降、肩、腰、右足を痛め、調整が難しかったが、エースとしての自覚を胸に、勝負の夏に照準を合わせてきた。藤田監督は「責任感の強い選手。何とか自分が抑えないと、という気持ちになったんでしょう。彼を責めることはできない」と語った。
前野は「相手が相手。気負い過ぎた。ボールを見極められ、甘い球を振ってくる。強打のチームでした」と振り返った。「意識していた」と語る早実の三番の主将・
清宮福太郎(3年)にも左前適時打を浴び、力負けした。
高校野球はこの日で一区切りも、前野の野球人生は続く。180センチ75キロ。将来性の高い本格派右腕である。「指定校推薦で、立教大学を目指しています。監督も立教出身。大学で、このチームの経験を生かしていきたい」と前を向いた。早実は早大の系属校であり、大学で野球を継続する部員も多い。前野は難関入試を突破することが条件も、東京六大学でWASEDAにリベンジするチャンスがある。神宮のマウンドで躍動する姿が、高校3年間、指導を受けた藤田監督だけでなく、ともに汗を流してきた仲間への最高の恩返しとなる。
文=岡本朋祐 写真=矢野寿明