3年ぶり夏の甲子園出場の名門

母校・横浜高(神奈川)を率いるのは、就任2年目の村田浩明監督。万全の準備で8月11日に予定される1回戦(対広島新庄)に臨む
神奈川代表の横浜高。就任2年目の村田浩明監督にとって主将・捕手として
涌井秀章(現
楽天)とバッテリーを組み、8強へ進出した2004年夏以来の甲子園だ。母校を率いる指揮官としては初。同校は3年ぶり19回目の出場だが当然、この夢舞台を経験した選手はいない。全国屈指の名門校とはいえ、「初出場」も同然である。
そこで、心強い「虎の巻」が配布された。
春3度、夏2度の甲子園優勝へ導いた渡辺元智元監督から助言があり、かつて同監督とコンビを組んだ小倉清一郎元部長からはA4用紙4枚にわたる手書きのメモが手渡された。恩師2人からのアドバイスを村田監督がアレンジし、資料として部員へ配ったのである。
今夏は新型コロナ禍の大会運営であり、春のセンバツに続き、大会前の「甲子園練習」がない。ぶっつけ本番で1回戦(大会第2日第2試合、対広島新庄)を迎える。そこで、この「甲子園入門書」が大いに役立つのだ。
「球場を知らないとプレーできない。(ライトからレフトへの)浜風が一つのポイント。外野の芝が硬い。投手と同じように、踏み出す足をしっかり踏み込まないと、送球が浮つく。あとは遠近感。スタンドが低いですからね。しっかり、想定して準備をしてきました」
8月9日の開会式(大会初日)は、台風接近による悪天候が予想されたため、1日順延。6日に大阪入りした横浜高としては、ありがたい日程変更となったという。
「バタバタしていたので、環境に慣れる意味でも、この1日はプラスになる。良い1日にしていきたい」
「甲子園にいかに慣れるか」
今年は東京五輪開催により、地方大会から甲子園大会までの日程が空いたため、特例で開幕までの練習試合が認められていた。横浜高は当初、8月3日の横浜商大高との1試合のみの予定だったが、村田監督は「チーム状況がゆるい」と、急きょ出発日(6日)の朝8時から、追加で1試合(対横浜市立金沢高)を組んだ。金沢高を指揮するのは、横浜高で村田監督の1学年上で主将を務めた吉田斉監督(03年センバツ準優勝)。「前夜にお願いしまして……(苦笑)」。持つべきものは先輩だ。
「(県大会決勝後)体も心もリセットさせて、そこから上げてきました。ゲームの中で成長してきたチームですので、(練習試合によって)良い形で甲子園に乗り込めたと思います。甲子園が特別ではない。やってきたことの反復。横浜高校らしい野球、やってきたことをいかに出せるか。(宿舎では)いつもと変わらず健康管理、体調管理を徹底してきました」
8月10日の開会式は、1回戦を想定して入場行進をさせるという。
「神奈川の代表として、歩かせてもらいます。甲子園練習がないですから、プレーしている気持ちを持つ。甲子園にいかに慣れるか」
初戦の相手・広島新庄高は今春のセンバツで2試合の甲子園を経験している。横浜高としては、立ち上がりの入りがカギを握りそうだ。「虎の巻」の成果が試される場となる。
文=岡本朋祐 写真=矢野寿明