甲子園デビューは4打数無安打

花巻東高の2年生三番・佐々木はセンバツ初戦敗退で、試合後は悔しさをにじませた[背後にいるのは、父である佐々木洋監督]
■第5日第1試合(3月23日)
市和歌山(和歌山)5-4花巻東(岩手)
2022年のセンバツ甲子園開幕を控え、最もメディア露出が多かったのは花巻東高の左のスラッガー・
佐々木麟太郎(2年)だった。1年秋の時点で高校通算50本塁打を放ち、今年3月の対外試合解禁以降もアーチを量産。同校の先輩で、佐々木が尊敬する一人であるエンゼルス・
大谷翔平に並ぶ56本塁打で、自身初の甲子園に乗り込んできた。
市和歌山高との1回戦。佐々木は相手の右腕エース・
米田天翼(3年)の前に4打数無安打(2三振、1死球)に封じられた。チームは最終回の粘りも及ばず1点差で惜敗(4対5)し、試合後は悔しさのあまり涙を流す場面も見られた。
「不甲斐ない結果で、責任を痛感しています」
大きな注目を浴びていた中で、結果が残せなかった理由は何か。佐々木の父である花巻東高・佐々木洋監督は試合後にこう言った。
「皆さんに取り上げていただけるほどの選手ではないと、私自身も思っていますので、本人の実力不足ということでしょう。真っすぐにも合っていない。こっちへ来てからも、(調子の)波があった。今回の悔しさを持って、夏に向かってくれればいいと思います」
昨年12月、胸郭出口症候群で両肩を手術。将来を見越しての治療であったが、今大会に少なからず影響があったことは否めない。
「焦りとか多い中で、ここまで持ってきた。それ以上に、対応力のなさ。真っすぐの伸びがあって、遅れていた。徐々に打席を通して修正していこうとしましたが、センスのなさが結果に出ている。夏に向けて、練習を追い込んで少しでも成長し、今度こそ、勝負を決められるようなバッターになりたいです」
佐々木は試合後の会見で「センスがない」と5回、繰り返した。周囲が騒がしくなる中でも、冷静に自分自身を見つめている。
「監督にも入学してからずっと、先輩である大谷翔平選手よりも、将来性も何もない、と。早熟タイプだと。たくさんの支えがあって、上がってこられた。甲子園の舞台で、花巻東のユニフォームを着て日本一になるのが目標。甲子園には人一倍の思いがある。人一倍、強いバッターになって戻ってきたいです」
183センチ117キロ。左打席での風格、スイングスピードはやはり、規格外だった。第4打席の一ゴロは鋭い打球であり、タイミングも合ってきていた。センバツは22年の公式戦初戦。今後、生きたボールを見ていけば、状態は上がってくるはず。まだ2年生。甲子園でしか経験できない反省を胸に、岩手に帰る。お世話になった3年生への恩返しを含め、佐々木が取り返す機会は十分に残されている。
写真=牛島寿人