若手の起用に夢を求める

原監督[左]の表情もさえない
5月ごろまでは、
巨人ファンの知り合いに、「川口さん、今年の巨人は優勝できますか」とよく聞かれた。その人は6月くらいからは、「川口さん、
大勢は楽しみですね」に変わり、最近は、「川口さん、巨人は大丈夫ですか」と暗い顔で言うようになった。
原辰徳監督自身、開幕前に「今年は大変な年になる」と言っていた。野手はそれなりにそろっていたが、投手陣の顔ぶれを見ると苦戦は想定できたということだ。
投手陣を任された
桑田真澄コーチもそれを見越し、キャンプから若手を抜てきし重点的な強化を続け、開幕からは新人の
赤星優志を先発で起用したり、大勢を抑えにしたりと世代交代を進めた。
ただ、序盤、先発で頑張った若手が息切れし、中継ぎ陣がまったく機能しない。オールスターブレークで何とか仕切り直しと思ったところで、このコロナ騒ぎだ。さすがの原監督も頭を抱えているだろう。
正直、優勝はもう厳しいと思うが、いまからCSを狙う堅実な戦いというのも寂しい。となれば、ファンとしては若手の成長を楽しみにするしかないだろう。候補はいないわけじゃない。野手なら
増田陸、
中山礼都、
北村拓己。コロナになった選手もいるが、若いんだからすぐ帰ってくるだろう。
投手では俺は
菊地大稀の真っすぐに惚れた。器用じゃなさそうだから時間がかかるかもしれないけど、真っすぐの力は天性もある。彼はエースとして育ててほしい。
長嶋監督は最下位に沈む中…
昔、
長嶋茂雄さんは1975年最下位に沈む中、客席から罵声を浴びても
新浦壽夫さんを使い続けて一人前にした。俺は巨人ファンだったし、同じサウスポーだったから、新浦さんには感情移入をして見ていた記憶がある。
79年秋の伊東キャンプのあともそうだよね。鍛え上げた
中畑清さん、
篠塚和典さん、
定岡正二さんを使い……いや、サダさんは伊東に行かなかったみたいだけど(笑)、若手を鍛え、使い、その先につなげた。
いま日本中の巨人ファンが寂しい思いをしていると思う。全員若い選手を使えというわけじゃないけど、原さんが、この選手を将来のクリーンアップにしたい、この選手を将来のエースにしたいという意思をはっきり見せてくれたら、ファンは決して離れてはいかない気がする。
写真=BBM