菊池雄星がポスティングシステムを利用したのは2018年オフ。翌2019年1月にはマリナーズと契約を交した。花巻東高の後輩、大谷翔平より1年遅れてのメジャー移籍だった。敏腕で知られるスコット・ボラス代理人がマリナーズと結んだ契約は、一般的なものに比べて複雑だった。基本的には3年で4300万ドル。4年目に球団側と菊池側の双方にオプションが付き、球団が行使する場合は4年総額6600万ドル、菊池が行使できるのは1年1300万ドル。また双方が拒否すれば3年でFAという内容だった。 15歳からの夢
マリナーズ時代の菊地
入団に際して菊池はアメリカ人記者の質問に英語で応答。「15歳からの夢がかなった。夢をかなえようと思って英語も勉強してきた。世界最高の舞台でプレーする中で、せっかくなら自分の英語で選手たちと話をしてみたいと思っていた」と、意欲に満ちた言葉を口にしていた。
スプリングトレーングでは先発投手として調整し、3試合に登板。メジャーデビューは日本で開催となった開幕シリーズ。東京ドームで行われた開幕2連戦の2戦目、3月21日のアスレチックス戦だった。先発して4回まで無失点。5回にマーカス・セミエンに適時打を許して1点を失い、さらに走者を残して降板した。4回2/3を2失点(自責点1)。マリナーズは延長12回の末、5対4で勝った。
この試合を最後に
イチローが現役を引退した。2001年からメジャーで幾多の記録を樹立してきたヒットメーカーの最後の試合で、菊池はMLBのスタートを切ったのだった。
5試合目のインディアンス(現ガーディアンズ)戦で初黒星。続く6試合目、大谷を前年の右ヒジ手術の影響で欠いていたエンゼルスを相手に5回10安打4失点と苦しんだ。しかし、味方が援護し、ダッグアウトから見つめる大谷の前でメジャー初勝利を挙げた。
そこから好調で5月19日の11試合目を終えた時点で3勝1敗、防御率3.43と安定感を示した。ところが直後に4連敗を喫し、防御率も5点台に跳ね上がった。結局1年目は最後まで安定感を欠き、先発のみで32試合に登板したものの6勝11敗、防御率5.46と、不本意な成績に終わった。
60試合制だった2年目は2勝4敗、防御率5.17。3年目の昨季は前半戦で6勝4敗、防御率3.48でオールスターに選出された。ところが後半戦は1勝5敗、防御率5.98。前半戦の好調を維持することができずにシーズンを終了した。
『週刊ベースボール』2022年8月15日号(8月3日発売)より
文=樋口浩一 写真=Getty Images