新天地でも自覚十分
リーグ連覇、26年ぶりの日本一に輝いたオリックスはチーム編成で大きな動きがあった。主軸を担っていた
吉田正尚がポスティングシステムでレッドソックスに移籍することが決定。中心選手がチームから去ったが、FAで
森友哉の獲得に成功した。
「強打の捕手」として攻守に掛かる期待は大きい。2019年に打率.329、23本塁打、105打点でMVPと首位打者を獲得するなど天才的な打撃技術は折り紙つき。守備面の課題を指摘されてきたが、同年に正捕手に定着以降は成長を遂げている。若手主体の西武投手陣を巧みな配球術で牽引。森はオリックスの入団会見で、「自分の一番の武器はバットですけど、ここまで積み上げてきた守備面も見てもらいたい。守りの部分でも評価してもらいたい」とコメント。会見に同席した
福良淳一GMも「打つほうは皆さん知っていると思うけど、守りのほうでも今年、ウチのチームはだいぶ苦しめられて、野手もそのあとだいぶ尾を引いた。何試合も。そういうところに期待しています」と高評価の守備面に言及している。
新天地でも正捕手としてチームを引っ張る自覚は芽生えている。注目されるのは、史上初の2年連続「投手5冠」に輝いた絶対的エース・
山本由伸の女房役だ。森は入団会見で、「みんなと話はしたいんですけど、山本(由伸)クンとかはオールスターとかで何回かしゃべったりしたんですけど、今回同じチームになって、どんどん話、コミュニケーション取っていかないといけないなというふうには思っています」と山本を名指しで挙げている。
守備面での評価が高い若月
負けられないのが、森と同学年の
若月健矢だ。守備面での評価は高い。19年に自己最多の138試合出場で、リーグトップの盗塁阻止率.371をマークした。
若月は週刊ベースボールのインタビューで、「今まで上半身だけを使った“ブチ投げ”だったんです。とにかく力任せに投げていて。でも、昨年から足を使って投げるという意味が少し分かってきた。18年シーズンが終わった後に中嶋(聡)さんや、鈴木(郁洋)さんに足の運びを教わったのが大きかったんです。どれだけ低い姿勢で動けるかが大事だったんです。低い姿勢で力を発揮できるか。低い姿勢で動くには、必然的に足を使うことになる。その中でトレーニングコーチにメニューを教えていただき、低い姿勢の中でも力が入るようになっていったんです。それで感覚が分かってきて。そこからです。送球も低く強く、そして安定していったのは。だから、どれだけ投げてもヒジ、肩に疲れが出なくなりました」と手応えを語っている。
山本の相棒としても頼りになる存在

日本シリーズでも山本[左]とバッテリーを組んだ若月
山本の相棒としても頼りになる存在だ。昨年は若月とバッテリーを組んだ11試合で10勝0敗、防御率0.72。今年も20試合で12勝4敗、防御率1.93と2年連続で最優秀バッテリー賞を受賞した。山本の力を最大限引き出す若月は縁の下の力持ちとして、貢献度が高い。
課題とされていた打撃でも今季は打率.281、4本塁打をマーク。得点圏打率.371と勝負強さを発揮し、対左投手に打率.412と強かった。来年は節目のプロ10年目。正捕手争いを繰り広げていた
伏見寅威が
日本ハムに移籍し、強力なライバルの森が加入したが生え抜きの意地がある。
森と若月のハイレベルな正捕手争いは、チームに大きなプラスアルファをもたらす。山本の女房役をどちらが射止めるか。
写真=BBM