センバツでは背番号17

慶応高は相洋高との神奈川県大会決勝を11対0で勝利し、12年ぶりの優勝を決めた。三番・渡邉千は2本塁打を放った。写真は1回表一死一塁から左中間へ2ラン
新チームの昨秋は公式戦4試合で、4打数1安打(2三振)。代打要員だった渡邉千之亮(3年)は一冬を越えて、中心打者へと成長した。
背番号17を着けた仙台育英高とのセンバツ初戦(2回戦)では「三番・右翼」で先発出場。8回表にU-18代表候補にも選出された右腕・
高橋煌希(3年)から中前打を放っている(3打数1安打)。チームは延長10回タイブレークの末、1対2で惜敗した。
「好投手のストレートに、振り負けないようにしよう」
センバツ帰りの春季県大会では、背番号7を着け、進化した姿を見せた。菅高との3回戦(ソロ)、向上高との4回戦(3ラン)で2試合連続の先制アーチ。藤嶺藤沢高との準々決勝でも7回
コールドを決めるソロで3試合連続弾となった。そして、相洋高との決勝でも1回表に先制2ラン、2回表に2点適時二塁打、4回表には2ランを放ち3安打6打点。11対0で相洋高を圧倒し、12年ぶり5度目の優勝に貢献した。
「初回は相手投手の立ち上がりの中で、先制点をたたき出せたので良かった。2本目も突き放す一発で良かった。(横浜スタジアムでの初本塁打は)最高でした!!」

4回表二死二塁から左翼席上段へ2ラン。渡邉千はこの試合、3安打6打点と大爆発した
今大会での5発を含め、高校通算14本塁打。3月の練習試合で1試合2本塁打はあるが、公式戦では初である。
「チームの勝利に貢献できて良かった」
なぜ、覚醒したのか。理由は2つある。
まずは、肉体改造だ。
昨秋の関東大会時点で75キロだった体重を、食生活に気を使うことにより、今春までに83キロ。また、「森林さん(貴彦監督)から『実力をつけよう』と言われ、ウエート・トレーニングに励みました」と、努力を重ねた。
技術的にも、一つのポイントがあった。
後ろの足に体重を残す打撃を習得したことが、確実性と飛距離につながったという。
「下半身を鍛えてきたので、そこを生かすために、下を使う練習をしてきました。体が突っ込んでしまう悪癖があったので、ボールを一歩引いて見ようか、と。打席の中で自分のスイングができるようになりました。本塁打は左方向が多く、逆方向へ強い打球を打つことが課題です。どのコースにも、簡単に投げられないようなバッターになりたい」
あこがれの存在は柳町達
あこがれの存在は中学時代に在籍した取手シニアの先輩・
柳町達(慶応高-慶大-現
ソフトバンク)だ。
「同じルートをたどっている」と、渡邉千自身も上のレベルをどん欲に目指していく。
慶応高は夏の県大会第1シード。春の神奈川王者として、関東大会が控えている。
「チームとしては、春の関東大会優勝。勝利につながる打撃をしたい。神奈川1位ですが、傲慢にならないで、チームのモットーでもある『挑戦』の気持ちを忘れないようにしたい」
常に謙虚な主砲である。今大会、5本塁打のうち3本が第1打席だった。対戦するバッテリーは、集中力を研ぎ澄ませてくる初回の入りに要注意である。
文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎