坂本が新たなポジションに
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現在、遊撃でスタメン出場を続けている門脇
神宮球場がどよめいた。9月7日の
ヤクルト戦(神宮)。体調不良による特例抹消から3試合ぶりに復帰した
巨人・
坂本勇人が、試合前のスタメン発表で「五番・三塁」と
コールされた。
高卒2年目の2008年以来15年以上、「不動のレギュラー」として遊撃を守り続けていた。三塁での公式戦出場はプロ17年目、通算2081試合目で初だったが、新たなポジションで期待以上のパフォーマンスを見せた。
見せ場は1点差に迫られた4回。二死二塁と一打同点のピンチで、
ドミンゴ・サンタナの強烈な打球が三塁線を襲ったが、滑り込みながらバックハンドで捕球すると、すぐに立ち上がり一塁に正確なワンバウンド送球でアウトにした。この好守で試合の主導権を渡さず、打撃でも魅せた。1点リードの9回一死一塁で、
高梨裕稔の直球を左中間席に運ぶ17号2ラン。試合を決める一撃で勝率を5割に戻した。
遊撃は体の負担が大きい。坂本は昨年故障で3度離脱し、一軍に定着以降で最少の83試合出場にとどまった。今季も6月に右太もも裏肉離れを発症。打撃の状態が上がり、チャンスメーカーとして奮闘していただけに、約1カ月間の戦線離脱はチームにとっても大きな痛手だった。体に掛かる負荷を小さくするためにも、他のポジションへのコンバート案は以前からささやかれていたが、遊撃で抜群の安定感を誇る坂本の後継者が見つからなかった。
球界屈指の守備能力
その懸案事項が、解消されようとしている。坂本の三塁起用も、この男に遊撃を託せると首脳陣が判断したからだろう。ドラフト4位のルーキー・
門脇誠だ。身長171センチと小柄な体から豪快なフルスイングが2月の春季キャンプで話題になったが、門脇の魅力は攻走守3拍子そろったプレースタイルだ。次の塁を狙う意識が高く、俊足を生かした広い守備範囲で球際にも強い。強肩でアウトにできるため、深い位置で守ることが可能となり、相手のヒットゾーンを狭めることができる。
今季は5月中旬から三塁のスタメンで出場し続けた。打率1割台と打撃の調子がなかなか上がらなかったが、本職が三塁の
岡本和真を一塁に回して門脇が三塁で出続けたのは、守備力の高さを評価されていたからに他ならない。
他球団のスコアラーは、「守備能力は球界屈指のレベルだと思います。ハンドリングが柔らかく、送球が安定している。アマチュア時代に遊撃を守り続けていたので一番しっくりくるポジションでしょう。足も速いし、執念を感じさせる。泥臭いプレースタイルで、巨人にいないタイプの選手です。打撃も非凡なので試合に出続ければ、対応能力が上がってくる。坂本の後継者になることは間違いないし、球界を代表する遊撃になる可能性を秘めている」と評価していた。
パンチ力のある打撃も魅力
打撃でも上昇気流に乗っている。3月から6月までは月間打率が1割台だったが、7月は打率.283、1本塁打、6打点、8月は打率.339、0本塁打、3打点の好成績をマーク。9月に入っても3日の
DeNA戦(横浜)、6日のヤクルト戦(神宮)で猛打賞と広角に安打を打ち分けた。9月9日の
中日戦(東京ドーム)では、4点リードの7回に
祖父江大輔の直球を右翼席に運ぶダメ押しの3号ソロ。パンチ力も大きな魅力だ。
長いシーズンを駆け抜けるために体調管理にも抜かりはない。門脇はコンディション面で気を付けていることについて、8月に週刊ベースボールの企画で以下のように語っている。
「最近、ホットアイマスクを着けて寝ています。ナイターが終わったら次の日に備えて早く寝たいんですけど、やっぱり試合中の興奮が冷めなくて寝つけない日が多かったんです。あるとき、ファンの方がくださったホットアイマスクを使ってみました。10分ぐらい着けて、眠くなったら外すんですけど、目がフワ~っとして、疲れが取れている感じがしました。それから、毎日のように使っています。すごくいいものをいただきました。それと、川のせせらぎなど入眠に良いという自然の音を流しながら寝ます。睡眠はコンディショニングの中でも大切なので、ほかにもいい方法があれば試してみたいですね」
残り試合が少なくなってきたが、「遊撃・門脇」で自身の存在価値を証明したい。
写真=BBM