チームに活力を与える一打

　立大野球部内で、全部員の共通認識がある。

「一番、Tがある」

「T」とは「戦う姿勢」だ。

　慶大との開幕戦(9月9日)で最も盛り上がったのは1対3で迎えた7回表の攻撃である。二死二塁で代打・平野太陽(3年・春日高)が右越えへ、1点差とする適時二塁打。6回表に左越えソロ本塁打を放った主将・西川晋太郎(4年・智弁和歌山高)は「Aチームの中で一番、ガッツのある選手。コイツならば絶対にやってくれると思っていました。打った瞬間は思わず、ベンチから飛び出してしまった。うれしかったです」と振り返った。

「T」の正体は言うまでもなく、平野である。

　立大は反撃も及ばず、2対3のまま敗れたが、平野のタイムリーはチームに活力を与える一打だった。リーグ戦初出場で初打席初安打。立大・溝口智成監督の熱い言葉が印象的だ。

「夏のキャンプ前からずっと、食らいついてきて、戦う気持ちを前面に出す選手。メンバーのギリギリのところの人間ですが、ずっと、粘ってきました。絶対的な力がある選手ではありませんが、食らいついてきたんです」

　福岡県の県立進学校・春日高から指定校推薦で入学。1年秋のフレッシュトーナメントで出場機会に恵まれると、2年春も2試合で経験を積み、2年秋の同トーナメントでは「一番・遊撃」で3試合に先発出場し、12打数4安打の成績を残した。今春のキャンプからAチームに抜てき。その後はBチームを行き来する立場だったが、この夏のオープン戦で「代打」のポジションを手にした。玉井一騎マネジャー(4年・都立昭和高)は明かす。

「平野はコツコツと努力を重ねてきた選手です。打席でも簡単には終わらない。2ストライクに追い込まれてからも、執念で粘る。Tの意識の高さは、チームの誰もが認めます。気合と根性を表に出す、監督好みの選手です」

　立大は2018年秋の慶大2回戦での勝利を最後に、同カードで4引き分けを挟んで18連敗となった。勝ち点は16年春が最後。主将・西川は「(連敗の)怖さは感じない。次は行ける。食らいついていきたい」と意気込みを語った。溝口監督も「悲観はしていません」と、努めて前を向き、神宮を後にした。「T」を見せた平野のド根性は必ず、2回戦につながる。

文=岡本朋祐