熾烈な外野のレギュラー争い

実戦でも結果を残している新人・佐々木
定位置争いが激しい
巨人の外野陣。各選手がアピールに必死の中、春季キャンプで活躍が目立つのがドラフト3位の佐々木俊輔、復活を期すプロ8年目の
松原聖弥だ。
即戦力外野手の佐々木はスイングが鋭く、打球が速い。「七番・指名打者」でスタメン出場した2月24日のオープン戦・
広島戦(沖縄)では4安打3打点の大暴れ。2回一死一塁で左中間に二塁打、3回一死二、三塁の好機でも左翼線に2打席連続適時二塁打を放つなど、逆方向に強い打球が打てる。守っても俊足を生かした広い守備範囲で、新人野手では2001年の
阿部慎之助監督以来23年ぶりの開幕スタメンに向けて視界良好だ。
中堅の定位置を争う松原も負けてない。「一番・右翼」でスタメン出場した23日のオープン戦・
阪神戦(那覇)では初回に中前打を放ち、一挙7得点の猛攻の口火を切った。初回の第2打席でも左前適時打。チームが苦手にしている左腕・
伊藤将司から打った2本の安打は大きな価値がある。同戦で猛打賞1打点の活躍を見せると、翌24日の広島戦でも2回に適時内野安打、3回は中犠飛と結果だけでなく打席の内容を評価できる。
21年に135試合出場で打率.274、12本塁打、37打点、15盗塁とブレークしたが、22年は50試合出場で打率.113、昨季は21試合で打率.000と存在感が薄くなっている。パンチ力があるため大振りになる傾向があったが、この春季キャンプでは叩きつけた打球で内野安打、コンパクトなスイングで逆方向への安打が多い。不振のときは思い切りの良さが影を潜め、試行錯誤しているように見られたが、現在はスピードという大きな武器を生かそうとする意識が打席の中で見える。21年の姿を追い求めるのではなく、生まれ変わった印象だ。
外野守備に不安が残る新外国人
「センターは大激戦区で佐々木、松原以外にも
オコエ瑠偉、
萩尾匡也がアピールしています。オープン戦では松原を中堅、佐々木を右翼で同時にスタメン起用しました。右翼のオドーアはレギュラーの最有力ですが、外野守備に不安が残る。本職の二塁を守り、守備能力が高い松原と佐々木をスタメン起用するというオプションも面白い」(スポーツ紙記者)
二塁は攻守の要として期待される
吉川尚輝がいる。だが、故障や打撃不振の事態を考えた時にオドーアが二塁に回る可能性は考えられる。メジャー通算178本塁打をマークしている長距離砲は飛距離が大きな魅力だ。一方で、メジャーで二塁での出場が1067試合と大半を占め、右翼での出場はわずか9試合。守備に神経を使うことで、打撃に影響する懸念がある。吉川の二塁の守備能力は球界トップクラスだが、昨季は打撃不振でスタメンを外れる機会があった。盤石なレギュラーとは言えない中で、長いシーズンは想定外のことが起きうる。阿部慎之助監督がどのような采配を見せるか。
近年結果が出ない助っ人野手

新外国人のオドーア。メジャー通算178本塁打を放っているが……
右翼での起用が最有力のオドーア日本の野球に慣れる時間が必要だが、結果を出せなければレギュラーの保証はない。近年は日本で活躍する助っ人外国人の野手が少ない。野球評論家の
伊原春樹も警鐘を鳴らす。週刊ベースボールのコラムで、こう語っている。
「今年も新外国人の獲得が続々と発表されたが、期待感をあおる報道のされ方が多かった。例えば1月22日に巨人入団が明らかにされたR.オドーアだ。『メジャー通算178本塁打の大砲』という枕詞が躍った。確かにレンジャーズ時代の2016年に33本塁打をマーク。翌17年も全162試合に出場して30本塁打。19年も30本塁打をマークするなど、シーズン30本塁打以上を3度、15年から8年連続シーズン2ケタ本塁打を記録している。しかし、それは“過去”の数字だ。昨年はパドレスで59試合の出場にとどまり、打率.203、4本塁打、18打点に終わっている。それと、私が新外国人打者を評価する際に見る数字は三振数だ。オドーアは19年にリーグワーストの178三振を喫するなど、通算1045三振。三振率は約24%に達している。通算打率も.230だから、やはり確実性の面で不安があるのは間違いない。近年の投高打低の傾向を考えても、過剰な期待には『?』がついてしまう」
オドーア、佐々木、松原、吉川……。4選手の起用法が巨人の命運を左右するかもしれない。
写真=BBM